Short story
□微熱
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「……ん、」
薄ら目を開けてぼんやりとした視界の中、見えるのは見慣れた天井。
(…そうか)
あのまま倒れて、それから誰かが家に連絡したんだろう。
痛む頭を抑え起き上がると、ドアをノックする音がした。
「景吾坊っちゃま、具合の方はどうですか?」
遠慮がちに顔を覗かせたのは…
「ミカエルか」
ミ「はい。先ほどメイドに熱を計らせたのですが、大変な高熱でして…」
高熱、か。
どうりでくらくらするわけだ。
ミ「何かお食べになった方が宜しいかと。薬も飲めませんし」
ミカエルの後ろには数人のメイドが並んでいて、その手には夕食らしき物をもっている。
「…食欲がない」
ミ「ですが「下がれ」
1人にしてほしい。
そう告げる様に再び横になる。
ミカエルは暫く俺を見つめ、「かしこまりました」と小さく頷いた。
ミ「…坊っちゃま」
部屋を出る手前で、ミカエルが振り返った気がした。
ミ「プライドも大事ですが、他に大切なことがあると私は思います」
「…何が言いたい」
ミ「りん様がおいでです」
ガバッと布団をめくれば、変わらぬ表情のミカエル。
もっと早く言え!
ミ「どうなさいますか?」
「………通せ」
短く呟くと、再びミカエルは「かしこまりました」と頷いた。
少し楽しそうに見えたのは気のせいだろうか。