Short story

□微熱
3ページ/7ページ




「……ん、」




薄ら目を開けてぼんやりとした視界の中、見えるのは見慣れた天井。




(…そうか)




あのまま倒れて、それから誰かが家に連絡したんだろう。

痛む頭を抑え起き上がると、ドアをノックする音がした。




「景吾坊っちゃま、具合の方はどうですか?」




遠慮がちに顔を覗かせたのは…




「ミカエルか」



ミ「はい。先ほどメイドに熱を計らせたのですが、大変な高熱でして…」




高熱、か。

どうりでくらくらするわけだ。




ミ「何かお食べになった方が宜しいかと。薬も飲めませんし」




ミカエルの後ろには数人のメイドが並んでいて、その手には夕食らしき物をもっている。




「…食欲がない」



ミ「ですが「下がれ」




1人にしてほしい。

そう告げる様に再び横になる。
ミカエルは暫く俺を見つめ、「かしこまりました」と小さく頷いた。




ミ「…坊っちゃま」




部屋を出る手前で、ミカエルが振り返った気がした。




ミ「プライドも大事ですが、他に大切なことがあると私は思います」



「…何が言いたい」



ミ「りん様がおいでです」




ガバッと布団をめくれば、変わらぬ表情のミカエル。


もっと早く言え!




ミ「どうなさいますか?」



「………通せ」




短く呟くと、再びミカエルは「かしこまりました」と頷いた。

少し楽しそうに見えたのは気のせいだろうか。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ