Short story
□初恋
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あの日俺は、吉本を見に家族全員で東京に来ていた。
柄にもなくはしゃぐ俺と、それにつられてはしゃぐ妹。
そんな俺らに呆れながらも話を聞いてくれる姉と、何処に来ても仲の良い両親。
女姉妹に挟まれて育ったせいか、昔から女の子にそれほど興味がなかった。
妹には"くーちゃん゙言われとるし、姉は何かある度に俺を使おうとする。
(いわゆるパシリっちゅー奴や)
そんな帰り道やった。
「ねぇ、公園行きたい!」
姉ちゃんの買い物に散々付き合わされた後、妹の友香里がだだをこね始めた。
オカンはそんな友香里を見て深い溜め息を吐く。
「何言うてんゆーちゃん…帰るで」
「いやや!遊ぶ〜!」
くーちゃん言うて、同意を求めるかのように俺の服の袖を引っ張る友香里。
「友香里。我慢しい」
そう言うと、ええ〜とまだ納得しない様子やった。
「あの先に公園あるやん。そこに少し寄ればええやんか」
姉ちゃんが小さく溜め息を吐き、前を指差した。
何で運良く公園あるんやろ…
「ほんまや!行こ、行こ!」
またしても服の袖を引っ張る友香里。
「もー、ちょっとだけやで」
妹の気迫に負けたオカンが肩を落として言った。
友香里はやった!と叫ぶと、猛ダッシュで公園へ向かって走りだした。
「くーちゃん、ゆーちゃんのこと見とってね」
フゥと溜め息を吐きながら言うオカンに「わかった」と苦笑し、頷いた。