Short story
□宝物
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暫く草の上で2人並んで座っていた。
ちらりとりんを見ると、一生懸命花を摘んでいる。
そういえば花好きだったっけ…
「りん、」
『なぁに?』
手招きをすると、てくてくかけよって来た。
「手、だして」
『うん』
言われた通り両手を差し出すりん。
その手の中に1本の花を置いた。
真っ白で、小さくて、りんみたいな花。
りんは暫くじっと見つめ、『ありがと//』と嬉しそうに笑った。
『りんね、大きくなったらお嫁さんになるの!』
目をキラキラ輝かせて言うりん。
お嫁さんって…
「…そう。」
『うん!りょまにいちゃのお嫁さん』
「え?」
思わず聞き返した。
でも、兄妹って結婚できないし…(テレビ情報)
「……お嫁さんは、駄目」
『!!』
俺がそう言うと、りんは泣きそうな顔になる。
「お嫁さんじゃなくて…
ずっと妹で、傍にいて」
喋った後急に恥ずかしくなってきて、視線を外した。
恐る恐るりんを見ると、思った通り目を丸くしていた。
『…うん、傍にいる!』
えへへと微笑むりんにつられて、俺も微笑んだ。
『じゃあ約束!』
りんは小指を立てて俺に向ける。
お互いの指を絡ませて、
『ゆーびきーりげーんまんうしょついたら…はりしぇんぼんのーます、ゆびきった!』
指を離すと、顔を見合わせて笑った。
゙2人だけの秘密゙
倫「2人とも、こんな所にいたの?」
『ママ!』
倫「帰ってご飯食べましょ。あら、その花どうしたの?」
『にいちゃに貰ったの!』
倫「スイートピー…?」
(…スイートピーって言うんだ)
母さんと手を繋いでいたりんがくるっと振り向いた。
余っている方の手を差し出して、
『にいちゃ!』
満面の笑顔。
この笑顔を失いたくない
守りたいって、
あの時
密かに誓った
小さくて大切な
俺の宝物