pure love

□別れ
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*りんside*









雪「告白されたぁ!!?」



『ゆ、雪ちゃん声大きいよ…っ』




日米親善試合が終わり数日が経ちました。




今日は部活がないので、雪ちゃんと買い物に来ています。

お気に入りのカフェに入り、ついこの間白石さんに言われたことを雪ちゃんに報告したら、突然椅子から立ち上がった。


恥ずかしくて慌てて雪ちゃんの口を覆う。




『こ、告白っていうか…えと、す、好きだって言われただけで…///』



雪「それを告白ってゆーのよ!!」




雪ちゃんの言葉にそっか…と納得したら、急に顔が熱くなった。






―りんちゃんが、好きや






あの時のことを思い出しただけで顔が真っ赤になってしまう。


私、病気なのかな…?



恥ずかしさから、運ばれて来たミルクティーを勢い良く飲む。
雪ちゃんは「何て言われたの?」とか聞いて来るけど、口にしたらますます顔が赤くなりそうで言えない。




雪「じゃあ、何て思った?」



『えっと…』




あの時、すごく驚いたけど



でも、






『…嬉しかった』




私も、白石さんが好きだったから。



だけど







―りんちゃんと俺の好きは、ちゃう思うねん







そう言われて、首を縦にも横にも振れなかった。



好きなのに…違う好き





雪「じゃ、この続きは私の家でじーっくり聞かせてもらうわよ」




雪ちゃんが期待に満ちた表情で私を見た時、はたと気付く。




『あ、私早く帰らなきゃいけないの!』



雪「え、どうして?」



『お兄ちゃん最近元気ないから、美味しいご飯作りたくて』




日米親善試合から帰って来たあたりから、どことなく元気のないお兄ちゃんを思い出す。

今日も、あまり会話をすることもなくお兄ちゃんは出掛けて行ってしまった。




(今日はお兄ちゃんの好きなものばかり作ってあげるんだ…っ)




強く思って一人で頷いていると、雪ちゃんはそんな私を見て深い溜め息を吐いた。




雪「(りんがいつまでもそうだから、進展しないのよ…)」




ハァ〜と再び長い溜め息。

頭に?マークを浮かべて首を傾げていると、雪ちゃんに買い物に付き合ってあげると言われ、笑顔でお礼を言った。






















『お兄ちゃんまだかなぁ…』




お母さんやお父さんはもう夕食を食べて、今は自室にいる。

連絡もなしにこんなに遅くなるお兄ちゃんは初めてだから、心配でしょうがない。



ぼおっと椅子に座っていたら、洗い物を終えた菜々子さんが近付いて来た。




菜「りんちゃん、そろそろお風呂に入って来たら?私待ってるから」



『いえ、私待ってます。菜々子さん、お先に入って来て下さい』




笑顔で言うと、菜々子さんは「そう?」と遠慮がちに頷き居間を出て行く。

きっと、私が待ってたいってわかったんだと思う。




心配だと言う気持ちを紛らわす為にテレビでも付けようとした時、ガチャッとドアが開かれる音がした。

慌てて玄関へ飛び出すと、お兄ちゃんが背を向け靴を脱いでいた。




『お兄ちゃん、お帰りなさい!』



リョ「…ただいま」




私の姿を見たお兄ちゃんは一瞬目を丸くし、静かに立ち上がった。




『ご飯食べるでしょ?』



リョ「いらない、」




予想外の返答に『え…』と固まってしまった。




(そんな…)




今日は焼き魚や茶碗蒸しなのに。


思わずしゅんと俯くと、お兄ちゃんは階段を上ろうとしていた足を止めて、反対方向に進みだした。

顔を上げたと同時に通り過ぎるお兄ちゃん。




リョ「…やっぱり食べる」




短く呟いた言葉に慌てて振り返れば、お兄ちゃんは椅子を引き腰を下ろす。


その姿を見て、ふわり、自然と口元を緩めた。


















『………』



リョ「………」




黙々と料理を食べるお兄ちゃんは、さっきから一言も言葉を発しない。


普段から無口なのは知ってるけど、




(何かあったのかな?)




機嫌が悪い訳ではなさそうだし、喧嘩してる訳でもないし…


私が何かしたとか、と眉を寄せ思い出していると、「ねぇ、」と前から声がする。




『何?お兄ちゃん』



リョ「あのさ、」



『うん』



リョ「…俺、」



『?』




お兄ちゃんは身を乗り出して、何か言いたそうに口を開く。

その緊迫した雰囲気に思わず体を硬くした。




リョ「…やっぱり、いい」




ふいっと視線を逸らし、お兄ちゃんはまた料理を食べ始めた。


不思議に思ったけど、何も言いたくないならと私もそれ以上追求はしなかった。












だけど、ちゃんと聞けば良かったって、すぐに後悔することになった。















次の日、いつものようにお兄ちゃんを起こさなきゃと部屋に入った。






けど、







『……お兄ちゃん?』







部屋に、お兄ちゃんの姿はなかった。
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