pure love

□絆
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*リョーマside*



りんを部屋に送った後、一階に集まる皆のところに行くため俺は一人階段を降りていた。




リョ「…………」




りんは今頃、怯えてるだろうか。
本当は一人にはしたくないけど、話さなきゃならない。


クリスのことを、りんとの関係を。



りんはきっと言いづらいだろうから、俺が…



深く考え込み、無意識に唇を強く噛んでいた。
















菊「あ、おチビ!」



不「りんちゃんは?」




俺の存在に気付き、ソファーに集まって座っていた先輩達が一斉に駆け寄って来た。

「部屋で寝てます」と短く答えると、安心したように肩を落とした。




跡「あの男は誰だ?」




聞かれると思ってたけど、…単刀直入すぎる。

まぁ、遠回しの方が面倒だけどね。




白「…俺も聞きたいわ」




周りを見渡してみると、皆同じ顔付きをしていた。


俺の話を待ってる。




リョ「…話します。クリスのこと、アメリカにいた時のことを…」




ゆっくり、俺は重たい口を開け話し始めた。






















アメリカに行ったのは、俺達が小等部に上がる頃。



りんと俺は何故かずっと同じクラスになれなくて、三年生になった時、りんがニコニコと俺に話した。




『あのね、私の友達がテニスやりたいんだって。
だから今度、お兄ちゃん教えてくれないかな?』



リョ「…別にいいけど」



『ありがとう!』




りんは昔から友達が多いから特に気にはしてなかったけど、まさかその友達が…




『お兄ちゃん、クリス・エドワードくんだよ!』



ク「…よろしく」




男だとは。

…とゆうより、




女…?




クリスの第一印象はそんな感じだった。
りんと二人並ぶとどことなく雰囲気が似てるせいか、妙に威圧された。
(てゆうよりムカついた)



でもテニスは純粋に好きそうだったし、センスもある。


クリスは日本人のハーフだということもあって、すぐに打ち解けた。

それからは、休日になると毎日三人でテニスをして過ごすようになった。




『お弁当食べよー』



リョ「うん」



ク「りん、食べさせて」



『うん、いい「駄目」




(色々な意味で、)ライバルでもあった。
人と付き合うのが苦手だと言うクリスとは、俺と似てるところがたくさんあって…

いつの間にか、親友とも呼べる関係になっていた。






だけど、俺達が6年生になった時だった。









クリスが変わったのは










クリスは、俺やりんと話さなくなった。
前から常に一人だったけど、更に孤独を貫き通すようになった。




「二人共、もうあいつに近付かない方が良いよ?」



『どうして?』



「ほら、あいつの家…






マフィアなんだから」











クリスは、アメリカで有名な暴力団の息子だった。
父親は女や子供にも容赦はしないと。


それを聞いた時、驚いたけど…ああ、そっかって思った。



テニスをしてる時偶然見えたいくつもの体の傷に、気付いてたから。





でも、俺もりんもそんなことは気にしなかった。

家とかそんなのどうでも良くて、ただ゙クリス・エドワード゙と一緒にいたかった。




『クリス来ないね…』



リョ「…うん、」




いつものようにテニスコートで待つ。

そんな日々が続いた。













そして、あの出来事が起こった。













ある夜、りんがなかなか帰って来なかった。


心配になり、色んな場所を探したけどいない。
最後に向かったのは…学校。

教室、廊下、校舎の隅々まで探し、中庭に行くと花壇の傍にりんらしき人影が見える。




リョ「りん…!」




傍まで駆け寄ると、真っ先に視界に飛び込んで来たのは…横たわる人々。

赤い血に染められていて、ぴくりとも動かない。


すぐりんに視線を戻すが、何だか様子が可笑しい。

顔を真っ青にさせて肩を震わせ、ただ一点を見つめている。


その方向に視線を向けると、











人を殴る、親友の姿。








相手の男の胸ぐらを掴み、ただ殴り続けている。
このままでは、死んでしまうと感じた。


俺が口を開く前に、後ろから弱々しい声音がした。




『…や、めて、』




振り返れば、静かに涙を流すりん。




『…もう、やめてっ』




ぴくり、クリスが反応し、掴んでいた服を離した拍子に、ドサッと血だらけの男が地面に倒れる。


ゆっくり、俺達の方に首を動かした。




リョ「……っ」




クリスの瞳は、以前のビー玉のような輝きはなく、闇夜に光る獣のようだった。
綺麗な顔は、返り血に染められている。




俺は反射的にりんの前に立ち塞いだ。






ク「…りんはさ、優しすぎるんだよ」




低い声が静かな夜に響き渡る。




ク「でも、近付く奴は皆俺が……










殺してやる」












その時、りんの手を咄嗟に握った



ギュウッと、どちらからかわからないけど、力を込めて





そうしないと、何かが壊れてしまいそうだったから
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