pure love

□暗闇
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夜、女子部屋のりん達は風呂から上がると、それぞれ自由に寛いでいた。

コンコンと部屋の戸が叩かれたので、りんはドライヤーを止めそっと開ける。




『はい、』




そこには風呂上がりだからか、髪が微かに濡れている菊丸が立っていた。

ニパッと笑った菊丸に合わせ、りんも反射的にニッコリ微笑み返すが、その後聞いた言葉はとんでもないものだった。







菊「えー今から肝試しをします!だから建物の前に全員集合ね!!」



『え、き、肝試し…?』



朋「わぁ、楽しそう!」




朋香が楽しそうに体を弾ませるが、りんは告げられた内容に呆然と固まる。




桜「…私、怖いのって苦手」



杏「あはは、大丈夫よ」




仮病を使って部屋に残ろうと考えたりんは、皆の方に向き直る。


…が、




朋「さ、行くわよ〜!」



『!!』




ガシッと朋香に腕を捕まれれば、そんな抵抗も虚しく終わりを告げた。





















建物から少し離れたところには運良く森があり、ぞろぞろとメンバー達は着いて行く。

目の前まで来ると菊丸はくるっと振り返り、やる気があまりない皆と視線を合わせた。




菊「ルールは簡単!この森を抜けて、またここに戻って来るだけ!」



リョ「…説明が本当大まかっスね」



千石「はいはーい!ペアはどうやって決めるの?」




ルールとかよりも回る相手が重要な千石は、すかさず手を上げる。




菊「ペアはーくじだよん」




くじの箱を持って来て高く掲げる。
千石はこの時、自分のくじ運の強さを誇らしく感じ、ガッツポーズをした。



学校ごとにくじを引くこととなり、青学の番がやって来たのでマネージャーのりんも慌てて列に並ぶ。

…と同時に、皆一斉にその方向に目を向けた。




「「((りんちゃんと組めますように!))」」




男同士で肝試しをしても普通に考えれば面白味がない。
女の子の数は少ないので、皆その確率にかけていた。



実をいうと、この合宿を通してりんの隠れファンが続出していた。

焼肉バトルの時看病された者や、合宿中のおむすびの提供…何より、自分達に一生懸命尽くしてくれることが嬉しかった。



辛い練習の中で、りんの存在に癒されている者は少なくない。




葵「りんさんと組めますように、りんさんと組めますように、」



佐「…剣太郎、声に出てるぞ」



裕「(25番か…りんは何番だろう)」




必死に番号を確認したり拝んだりしている者が数名。

そんな中、張本人はというと…




『(お兄ちゃんと組めますように…)』




自分が怖がりであるということを一番理解してくれている兄と組みたいと、強く願っていた。

くじを引くと皆の視線は一斉に注がれる。




千石「りんちゃん何番だった?」



『えと…15?』



千石「(ア、アンラッキー!)」




千石はショックすぎて、その場でピキッと音を立て固まってしまった。

周囲では静かに肩を落とす者も数名。




『お兄ちゃんは?』



リョ「…20」




そんな…としゅんと落ち込むりん。

俯いていると、リョーマは心配そうに顔を覗き見る。




リョ「大丈夫?」



『え、うん。大丈夫だよ』




力なく笑っても、無理をしているとまるわかりで。




リョ「…本当?」



『う、うん…』




更にリョーマが問い掛けるので、りんは不安な気持ちがだんだんと表情に表れ始める。



゙やっぱり、怖い…゙



そう素直に伝えようと、思い切って顔を上げた。




『お兄ちゃん、私「コシマエー何番やった!?」




ニコニコと笑いながら近付いて来る金太郎。
その姿を見て、リョーマはハァと溜め息を漏らした。




リョ「20だけど」



金「えーホンマ?ワイと一緒やん!!」




「よろしゅうー」と笑い、リョーマの手を握り大きく上下に振る。

嬉しそうな金太郎と違い、話を中断されたこともありリョーマは不機嫌に眉を寄せる。




『(いいなぁ)』




それを見ていたりんは金太郎に対し、本当に羨ましいと感じた。




『私のペア、誰なんだろう…』




ぽつりと呟き、自分の番号が書いてある紙をギュッと握り締めた。
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