pure love

□兄の記憶
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「只今より決勝戦、立海大附属VS青春学園の試合を行います!」




ついに始まった決勝戦。
ここまで来るために、皆が一団となって頑張って来た。


けれど、一番心配なのは、




『(大丈夫かな…)』




コートを心配そうに見つめるりん。

決勝戦だというのにリョーマはまだ来ていない。
その為堀尾が代わりに並んでいるのだが、その姿が余りにも挙動不審なので、バレないかと不安だった。




仁「ずいぶん覇気の無い1年坊じゃの」



堀「(ヤベェーバレてるよ!!)」




立海には既にバレていて、気付いてないのは堀尾自身だけ。


青学の皆に大きな不安を残し、試合は始まった。










竜「今さっき連絡があって、越前は…軽井沢にいるそうじゃ」



菊「軽井沢?!」



不「りんちゃんは知らなかったの?」



『はい。でも実は、一昨日の早朝にお父さんと出かけたみたいで…行き先は言ってなかったので』




朝は早いりんだが、起きた時には既にいなかった。




竜「電車のトラブルで帰って来れないらしい。
越前抜きで決勝を戦わなければ…」



桃「…俺、捜して来ます!」



『私も行きます…っ』




桃城に続きりんも走り出す。
大石の声が聞こえるが、今の2人には耳に入ってこなかった。






跡「事情は把握した」



『跡部さん!』




目の前に立つ跡部に気付き足を止める。

ついて来いと言われ、不思議に思いながらもその後を追うと…




桃「ヘ、ヘリ!?」




目の前には、小型のヘリコプター。
予想外な事にりんと桃城は目を丸くする。




忍「ところで何で俺もやねん?」



跡「ナビゲーターがいるだろ。いいから乗れ」



忍「強引やなぁ…」




溜め息を吐きながら、渋々中に入ろうとする忍足に慌てて続こうとするりん。




跡「…お前は待ってろ」



『!ど、どうしてですか?』




強い口調の跡部に負けじと言い返す。
普段は素直なりんだが、兄がいないという一大事となれば別だ。




跡「越前が戻って来た時の為だ。すれ違いになるかもしれねぇからな」



『で、でも「待ってろ」




短く言い捨てると、跡部はヘリの中へと姿を消した。




忍「堪忍なぁ。あれでも、りんちゃんのことを思って言ってるんやで」



『……』




わかってる。
マネージャーが試合の応援をしない訳にはいかない。




桃「任せろ、越前は必ず連れて帰るからな!」




ニッと笑いりんの頭をクシャッと撫でる桃城は、いつでも頼りになる先輩だ。




『…よろしく、お願いします』




ペコリ頭を下げる。
小さな小さな声が届いたかわからないが、跡部が頷いてくれた気がした。




『お兄ちゃん…』




どうか、間に合いますように。



言い表わせない不安に、りんはギュッと目を瞑った。
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