pure love

□氷帝
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*りんside*



桃城先輩のレギュラー落ちを聞いたのは、練習を見に青学へ行った時。



菊丸先輩に誘われて、お弁当を持ってお兄ちゃんと行くことにした。



でも、皆の雰囲気がちょっと違っていた。




大「こらそこ1年!声が出てないぞ!!」




いつも穏やかな大石先輩が怒っているように見えた。




乾「大石の奴、相当イラついてるな」



不「うん」



『乾先輩、不二先輩!』



不「りんちゃん。来てくれてありがとね」



『いいえ!あの、何かあったんですか…?』



不「…うん。実は…」











桃城先輩は、ここ最近練習に顔を出していないみたい…



(…心配だな)




教室から曇りの空を見上げて思った。



私にできることがあれば良いんだけどな。




(先輩の行きそうなところって…)




ある場所を思いついて、授業終了と同時に走りだした。












やって来たのはストリートテニス場。


桃城先輩、いるかな…




階段を上がりコートを見ると、杏ちゃんと試合をしてる先輩がいた。




杏「何か桃城くんらしくなってきたね、やっと。」



桃「そーか?何も変わんねーけどな」




何だか楽しそうで、声をかけるタイミングを逃してしまった。




杏「あれ、りんちゃん?」




どうしようか考えていると、杏ちゃんがこっちに気付いてくれた。




『こんにちは…』



杏「どうしたの?そんなに息切らして」



『えっと、桃城先輩を探していて…』



桃「俺を?」




桃城先輩は目を丸くして私を見た。




『その、先輩が最近部活に来ていないって聞いて…心配になって…』




もしかしたらすごく大きなお世話かもしれないって、喋ってる途中で気が付いた。



先輩は一瞬目を開いて、すぐに笑顔になった。




桃「……さんきゅーな」




そう言って、頭を撫でてくれた。




(先輩は変わってない)




安心してか、自然と笑顔になる。




桃「杏…いや、橘妹もさんきゅーな」



杏「何よ、言い直さなくたって!!」




3人で笑い合う。









「随分と楽しそーだな、桃城よ」




声が聞こえた方を見ると、男の人が観客席に足を組んで座っていた。



後ろには同じジャージを着た人達が立っている。




桃「…どーも」



「モテモテじゃねぇの」




(…誰?)




桃城先輩の反応からして、多分知り合いだ。




杏「……っ跡部…」



『え?』




杏ちゃんが悔しそうな顔で呟いた。


跡部って…杏ちゃんが言ってた人?



この人が…




跡「都大会では兄貴にまんまとやられたぜ。杏ちゃんよ」




跡部さんは杏ちゃんを見据える。



杏ちゃんのお兄さんは不動峰中の部長で、跡部さんは氷帝学園なんだよね…




跡「関東大会からは全員正レギュラーで臨ませてもらう。

二度とあんな間違いはない」



「おい跡部、こいつホンマに青学レギュラーなん?
大したことなさそーやん」




眼鏡をかけた人が、桃城先輩を見ながら言った。




桃「あ"?上等じゃねーか、コートに入れよ」



「悪いけど俺らダブルス専門」



「お前その娘達とでも組んでやる?」




いつのまにか、眼鏡の人の横に赤毛の人が座っていた。



桃城先輩は振り返り、杏ちゃんと私を交互に見る。




杏「テニスならりんちゃんの方が上手よ」



『え!そんなこと、』




杏ちゃんがウィンクしながら言った。


杏ちゃんの方がずっと上手なのに…








リョ「ねぇ、サボリっすか?桃先輩」




聞き慣れた声がして振り返ると、階段の所にお兄ちゃんがいた。




『お兄ちゃん!』



桃「越前!?」



杏「越前くん良いトコに、今ね…」




3人に一気に話しかけられてお兄ちゃんは迷惑そうな顔になった。




跡「…お前があの青学1年レギュラーか」




跡部さんが目を細めてお兄ちゃんを見ていた。




跡「あの山吹中の、怪物亜久津を倒したらしーぜ」



「え、あのチビが?」




(…チビ…)




「怪物亜久津も大したことあらへんなぁ」



「言えてるぜ侑士!
あの不良、煙草とか吸ってて体力続かなかったんじゃねーの!」




(………)




赤毛の人は可笑しそうに笑いながらジャンプした。


空中で回転して、桃城先輩とお兄ちゃんの後ろに降り立つ。




「俺がまとめて面倒みてやる、来いよ」



桃&リョ「「やだね」」




2人の声が見事に重なった。

その後暫く言い合いが続き、赤毛の人も「なんだ?こいつら…」と困惑していた。




桃「とにかく、コイツと組むくらいならりんと組むぜ俺は!」



『えぇ!』



リョ「ねぇ…それよりさぁ」




お兄ちゃんが私の前に立った。


真っ直ぐに前を見て、




リョ「そこのサル山の大将、試合やろーよ」



跡「あせるなよ」



リョ「逃げるの?」



「あのチビ、一丁前に跡部を挑発してるぜ」



「亜久津を倒したからって天狗になってんじゃねーの」




(………)




お兄ちゃんは…天狗になんかなってない。


それに…




跡「関東大会で直々に倒してやるよ。青学全員、完膚なきまでにな」




『…待って下さい』




立ち去ろうとする跡部さんに向かって、小さな声で引き止める。


皆一斉に私を見て、怖くて足が震え始めた。




『せ、青学は…負けません。桃城先輩も、お兄ちゃんも…すごく強いです、それに…』




俯いていた顔を上げて、




『お兄ちゃんは、チビじゃないです!』





………




「「「(そこ!?)」」」





私がそう言ったら、一瞬静まり返った。


何か変なこと言ったのかな…?



跡部さんは暫く私を見つめてたけど、すぐに背中を向けてしまった。




跡「…行くぞ」
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