beloved

□過保護応援団
4ページ/7ページ





岳「お〜やってるやってる」



芥「うわぁ…何かわっくわくしてきたC!」



『が、がっくん?ジロちゃん!?』




小さな子供のようにキラキラ目を輝かせるジローは、やがてりんに気付くとだっと駆け出してきた。




芥「りんちゃーん!…わあっ」




が、ぐいっと襟首を掴まれ、ジローの体は後ろに引っ張られた。


皆はというと、その人物に又もや驚いていて…





跡「はしゃぎすぎだジロー」



芥「えーいいじゃん!」



忍「まぁこんだけ豪華な体育祭やし、気持ちもわからんでもないけどな」



海「跡部さん、忍足さんまで…」




跡部は眉間に皺を寄せ、むーと頬を膨らませるジローに溜め息を溢す。
呆然と立ち尽くす者達に気付くと、ふっと何処か口元を緩めた。




河「ええと、氷帝の皆がどうしてここに…?」



大「(ナイス隆さんっ)りんちゃんが誘ったの?」



『い、いえっ…あ、でもこの間、』




普段から仲良しの岳人とジローと一緒に遊んだ時、体育祭の話をしたことを思い出した。




忍「急に来てしもーて堪忍な。2人だけやと心配やし、」



岳「侑士、りんに会いたいとか言ってたじゃん」



忍「…岳人黙っとき」




少しだけ焦る忍足に、『え、えと…』と言葉を探すりん。


戸惑っている内に跡部と目が合った。




跡「…そういうことだ」



『!』




カアッと赤くなる頬を感じていると、「頑張って応援するC!」とジローがVサインをする。



こんなに幸せで良いのだろうかと、りんは泣きそうになるのをぐっと堪えた。






『ありがとう。すごく…嬉しい、です』




素直な気持ちを伝えれば、跡部と忍足も微笑み返してくれた。



精一杯頑張ろうと自分に活を入れ、背中を向けて駆け出したのだった。





















雪「ちょ、ちょ、りん!」



『あ、雪ちゃんっごめんね遅れて』




何とか間に合ったりんは、列に並ぶ雪に引き留められた。




雪「何で跡部さん達がいるのよ!?」



『え、えと、応援してくれるみたいで…』



雪「何よそれぇー!」




「ノートとカメラ教室に置いて来ちゃったよ!」と嘆く雪に、そこ!?とツッコみたい気分になる。




「りん!誰か紹介してよっ」



『へ?でもさっきは応援団の人が良いって、』



「あんなのと比べもんになんないわよー」



「うわ、あの眼鏡の人かっこいいい」




先程までまるでジェットコースターに乗った時のように叫んでいたのに…この友人の切り替えの早さには驚く。



今度聞いてみると言うことで、何とか話は治まったのだった。







一方で、噂の的のこの人達は…




跡&忍「「はっくしゅ…っ」」




2人揃ってくしゃみをし、「?」と首を捻っていた。




河「あ、りんちゃんが走るみたいだよ」



乾「良いデータが取れそうだな」



大「不二、2レーン目にいる子」



不「うん、大丈夫」




MYカメラを持参し、大石の指す方向に向かって構える不二。

その姿は愛する娘の姿を撮る親にしか見えない。




海「……先輩」




そんな自分の先輩を見ながら、海堂は何処か遠い目をしていた。




菊「おチビ〜見える?」



リョ「…見えるっス」




背が低い為人の影に隠れてしまっているリョーマに、悪戯っ子のように笑う菊丸。


リョーマはムッとしながらも、前を見据える。




桃「お、始まった!」




桃城の言葉と共にスタートの合図が響き、一斉に駆け出した。




芥「うわぁりんちゃんすごEー!」



岳「ダントツじゃん…」




りんは、1人だけ飛び抜けて遥か先を走っていた。



テニスに関しても女子テニス部と比べ物にならないくらいに、強い彼女。

運動神経は良いと感じていたが…
まさかここまでとは思っていなかったのだ。




走り終えたりんは、暫く乱れた息を調えるとくるっと振り向く。


そして感動している親(青学の皆)の元へ小走りで近付いて来た。




『せ、先輩先輩っ1位ですっ!』




少し興奮気味で、本当に嬉しいと伝わってきて。




桃「良かったな、りん!」



不「おめでとう」



『…はい!』




優しく微笑みながら皆に頭を撫でて貰い、りんは一層嬉しそうに頬を緩めた。


リョーマにも「おめでとう」と言って貰って、幸せ気分でいっぱいになる。




跡「…………」



忍「(…何か言いたそうやな)」




何も言わず、ただ喜ぶ彼女の姿を瞳に映している跡部に、忍足は肩を竦める。



やがて次の種目に行ってしまったりんの背中を、彼は暫し目で追っていた。






海「次は何だ?」



桃「りんが出るのは、次にパン食い競争…学年対抗リレーだな」




プログラムを一緒になって覗く2人は、珍しく喧嘩もせず物静かだ。
りんのことになると一致団結するらしい。




そうこうしている間にパン食い競争が始まった。




「位置についてー…」




掛け声と共に走り出す生徒達を目で追いながら、首を傾げている者がいた。




跡「おい、何でパンが吊るしてある?」



忍&岳「「((言うと思った…))」」




パン食い競争なのだから吊るされて当たり前なのだが、初めて見るだろう跡部には理解不能らしかった。


「見とればわかる」と言う忍足に眉を寄せながら監察していれば、ようやく主旨を理解した。




やがてりんの番になり、颯爽と誰よりも速く駆け出したように見えた。





……のだが、
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ