beloved

□過保護応援団
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ここ越前家では…夕食後、家族会議が行われていた。







南「…で、本題に入る。問題は体育祭が男子校と合同なこと。あと……」



『……………』



南「お、俺が行けないことだ〜」



『お父さ…っ』




本当に悔し涙を流す南次郎に一同ドン引きしていたが、りんだけは駆け寄りその背中を擦っていた。




倫「ごめんねぇりん。おばあちゃんが足腰悪くしちゃったもんだから」



『ううん。私の方こそ、会いに行けなくてごめんね』




倫子の母、基りんとリョーマの祖母の体の調子が悪い為に、南次郎を連れて向こうの家に行くことになったのだ。



その日が丁度体育祭と被ってしまい、娘溺愛中の南次郎としては残念極まりない事実で。




菜「大丈夫ですよおじ様。私も大学の帰りに寄って、たくさん写真撮って来ますから」



倫「あら、ありがとねー菜々子ちゃん」



リョ「先輩達来るみたいだし、何の問題もないよ」




リョーマの言葉にピタリと動作を止めた南次郎。

かと思いきや突然両肩を掴まれたので、リョーマは目を丸くさせた。




南「リョーマ!あの青少年達にも言っとけよ。りんに変な虫が近寄んないようにな!」




その剣幕に若干引きつつ、リョーマはハァと溜め息を吐く。


既に倫子や菜々子と体育祭の話で盛り上がるりんに視線だけ向けた。




リョ「…当たり前」



南「リョーマくん…!」




抱き付くように両手を広げた南次郎を、素早く交わしたのだった。


























体育祭、当日の朝ー…




雪「ね、りん!来た来たっ!」



『へ、』




応援席で見ていたりんは後ろから背中をつつかれ振り向くと、
興奮気味の雪が前を指差したので、再び顔の向きを変えた。




「「「フレーフレー赤組ー!!」」」



「「「負けるな白組!!」」」




学ランを着て流ハチマキを付けた男子達が、グラウンドの真ん中で応援を始めていた。
太く、逞しい男子の声にも負けない、




「「「ピギャアアアアアアアアアア」」」




…女子の黄色い声。




「ね、あの1番前の人超かっこ良くない?」



「え〜私はその隣の人だなぁ」




珍しい男子の姿に、女子生徒が色めかないはずもなく。

この機会にお近づきに、あわよくば彼氏に…と考える者も少なくなかった。



確かに皆凛々しくて、友達が騒ぐのもわかる。
…けれど、




『…白石さんが、1番……だもん』




そう言ってから暫くして、りんの顔はさっきよりも真っ赤に染まった。

小さくなって俯く姿を見ていた友人は…




「「っ!りん可愛ぃぃい!!」」



『ひゃ…!///』




ギューッと2人に挟まれる形で抱きしめられ、『く、苦しいよ』と必死にもがく。
ようやく解放された時には、既に応援が終わっていた。




「次は徒競走ー…徒競走に出場する選手は…」




放送が耳に入ると周りの生徒達は動き出す。

楽しみにしていた徒競走が始まる、とりんも自然と体を弾ませていた。
…その時、




『お兄ちゃん?』



雪「え?」




兄の気配を感じた気がして、移動中の足をピタリ立ち止まらせる。


いくらブラコンでもそこまでいくのか…と雪が呆れを通り越して何も言えないでいれば、







菊「ほえ〜すっごーい!旗がいっぱい!!」



大「こら英二、先に行くなって…」



桃「おーっ盛り上がってんなぁ!」




がやがやと騒がしくも姿を見せる青学の面々。


雪が隣を見るや否や、りんは既に高速で走り出していた。




『先輩ー!』



桃「!おわっと、」




来てくれたことが嬉しくて、思わず突進…抱き付いてしまった。


桃城は一瞬目を見開いたが、すぐに笑顔になり抱き付くその頭を一撫で。
「頑張れよ!」という言葉にコクコクと頷く。




菊「あーりん!俺にも〜」



『はいっ』




嘆く菊丸に微笑み抱き付けば、ギューッと力強く返してくれた。




リョ「…………」



不「越前、ボールは駄目だよ」




何処から出したのか、抱き付く2人を静かに見据えテニスボールを握り締めるリョーマを見て、不二は苦笑した。


不穏な空気に全く気付かない(気付けない)りんは、リョーマと目が合うと嬉しそうに笑い近付く。




『お兄ちゃんっ来てくれてありがとう』




ニコニコと、本当に嬉しそうに微笑むりんは、皆にも『ありがとうございます』とペコリ頭を下げた。



それにつられるように頬を緩ませる皆を見た後、リョーマはふと腕を伸ばしりんの頬に手を添える。


『お兄ちゃん?』と首を傾げれば、ギュムっと軽くつねられた。




『!ほにいは…っ(お兄ちゃん)』



リョ「頑張ってね」



『う、うん!』




微かに頬を緩めて笑うリョーマに、りんの表情もパアアと明るくなる。




不「りんちゃん、次の徒競走に出るの?」



『はいっ』




そうだ!と移動中だったことを思い出して、足の向きを変えようとしたその時…「キャア!」と悲鳴に近い女子の声が耳奥に響いた。



一体何事だと良く目を凝らせば……
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