beloved

□浪速のバカンス
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ハァハァと荒い息を繰り返し、飛び込むように入って来たのは……




『友香里ちゃん?』




キョトンと目を丸くするりんの声に反応して、友香里はギロリと鋭い目をしながら顔の向きを変えた。


りんを瞳に入れた瞬間、まるで獲物を捕える野獣の如く飛び付いた。




友「…りんちゃん!」



『は、はい!』



友「何で家に泊まってくれへんの!??」




至近距離なのに大声で叫ばれて、りんの耳はキーンと音が鳴った。




『な、何でって…えと、ご家族の方にも迷惑だろうし、白石さんもそうした方が良いって…』



友「くーちゃんが何言ったか知らんけど、うちはりんちゃんと枕投げとか、恋ばなとか、枕投げとかするん楽しみにしとったのに!!」



紅「(今枕投げ2回言うたな…)」




肩を揺さ振る友香里は、声には迫力があるが…その顔は悲しそうに歪んでいた。



りんは胸がチクリと痛み、掴まれていた友香里の手をそっと握る。




『…ごめんね、でも、白石さんにも何か事情があるんだと思うし……でもね、友香里ちゃんに会えること、私もすっごく楽しみにしてたんだよ』




『本当だよ』とふわり優しく微笑んだりん。


友香里の顔もだんだん緩み始め……いや、何故か震え始めた。




友「……りんちゃんかわええー!!」



『ふぇ!///』




ギュムッと抱き付く友香里に、りんは顔を赤くして戸惑う。



まるでコントでも見ているような感覚に陥り、その光景を呆然と眺める紅葉。


暫くして、やっとツッコむ気になった。




紅「…友香里ちゃん。あんたまさか、それ言いにわざわざ?」




呆れたように溜め息を吐く紅葉の言葉にぴくっと反応して、友香里はゆっくり立ち上がった。


わなわなと体を震わせ、強く拳を握り締める。




友「ホンマ……ムカつくんやあの男、」



紅「また喧嘩したん?翔太と」




2人の会話に全くついて行けずに、りんは首を傾げる。




友「そう、翔太!!あいつな、今日のプール教室でうちの水着見て「貧乳はスクール水着しか似合わんな」とか言うてん!しかも大声で!
皆に笑われるしもうホンマ最悪やねん!!!」




力説する友香里は、興奮して息も途絶え途絶えで。




友「せやからな!今日これから海行くやん?
何故か翔太も行くみたいやから、大人っぽく見える水着…ダイナマイトボディに見える水着、紅葉ちゃん貸して!!」




頭を下げて、懇願するように両手を揃える友香里。


りんは「ダイナマイトボディ」に反応し、ゴクンと唾を飲み込む。




紅葉が口を開けようとした時、再びダダダ…と新たな訪問者を知らせる足音が響いた。


襖が開き、そこにいたのは……




小「そんな時はうちに任せてや〜!」



友「小春ちゃん…!」



ユ「ちょ、小春速すぎや…」




その後ろでゼェゼェ言いながら、たくさんの紙袋を持ち姿を見せたユウジ。


りんが慌てて駆け寄りオレンジジュースを渡すと、ユウジはそれを一気飲みした。




小「悩める乙女の為、一肌脱ぐわよ〜
さ、ユウくん!!」



ユ「OK小春!」




何処から取り出したのか、ユウジはガラガラと衣紋掛けを運んで来た。



そこには…たくさんの水着。




小「折角バカンスに行くんやし、可愛くせな!」



ユ「オトンに借りて来てやったで〜」



紅「そ、そこまで…」




ユウジの父はデザイナーなので、入手は簡単だったらしい。


呆気に取られる紅葉の隣では、友香里がキラキラと目を輝かせていた。




友「すっごいやん!じゃ、見立ててくれるん!?」



小「勿論よーっこのスポーティーなのも似合いそうやねぇ」




もう試着タイムは始まったらしい。



ポカンとするりんの横で、紅葉は「次から次へと…」と本気で疲れていた。


と、くるっとりんの方へと振り返った小春。




小「りんちゃんも選んであげるからねぇ」



『へ!いえ、私は…』




ビキニとかではないが、りんも一応持って来ていた。

小学生からのではあるが…




小「こういう水着の方が、蔵リンも喜ぶ思うねん」




小春の手には、ヒラヒラのレースがいっぱい付いたビキニ。


一瞬考えるが、りんは顔を赤く染めブンブンと首を横に振った。




『む、むむ無理です!///』




そんな水着を着て、恥ずかしくて人前になんて出れない。
ましてや白石の前なんて…



そんな純粋な乙女の気持ちなど全くお構い無しに、小春と友香里は着々と選んでゆく。




小「りんちゃんロリ顔やし…やっぱりピンクかしら?」



友「イメージカラーは白やけどなー
あ、あえての黒とか!」



『あ、あの……』




同情の瞳をした紅葉の手が、肩にポンッと置かれる。




小「蔵リンってどーいう系が好きなん?」



友「んー…やっぱ清楚系?でもりんちゃんが着るんやったら、何でも喜ぶと思うわ」



小&紅「「((確かに…))」」




兎に角試着してみようと言うことで、候補を絞ったところでジリジリとりんに近寄る。


そんな小春と友香里に恐怖を覚え、後退りするりんだが…後ろの壁に塞がれてしまった。




『え、えっと…』




…この後りんの身に何が起こったのかは、言うまでもない。
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