beloved

□無人島
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一方、別荘では……




跡「りんがいないだと?」




夕食中、騒がしい周囲の中一際大きく跡部の声が響いた。




白「携帯に掛けても出えへんし…りんちゃんが出て行って1時間は経つで」




今まで走って探していた為、白石の額は汗が滲んでいる。

跡部は眉間に皺を寄せた。




リョ「…別荘にはいないみたいです」




白石から既に事情を聞いていたリョーマは、広い別荘を青学の皆と手分けして探していた。


保護者代わりでもある青学メンバーは、りんが迷子になったのではと大慌てだ。




跡「…あそこかも知れねぇな」




思い出したように呟く跡部を、白石とリョーマは揃って見上げる。




跡「跡部財閥所有の島がこの近くにあるんだが…あそこは橋を渡って行けるからな」




「満潮になって帰れなくなったんだろ」と溜め息交じりに言い、顎に手を添えた。




リョ「無人島ってこと?」



白「ほな、船で迎えに行けば…」



跡「無理だな、この海だ」




小さく首を振りながら、跡部は窓の向こうに視線を送った。

海はかなり荒れていて船は出せそうにない。




白「…誰か知らない奴がおったらどないするん!」




過保護な彼は、りんの身に何かが起こったら、と心配でしょうがない。


リョーマも隣でコクコクと強く頷き、同じ意見の様子。




跡「いや、それはねぇ。俺様の所有地に許可なしに踏み込む奴は、電撃が走るようになってるからな」




その電撃も、特定の者(合宿参加者)意外が足を踏み入れるとレーザーが察知し、機動するようになっているらしい。



それを聞いた2人はホッと安堵の表情を見せた。
のだが……、




小「蔵リン大変よ!光も見当たらないの」



白「…財前も?」




バタバタと飛び込むようにやって来た四天宝寺メンバー。

小春の言葉に、白石の顔は途端に曇っていった。




ユ「あいつ枕投げ大会にも参加せんで、ふらっとどっか消えてなぁ」



謙「別荘内にもおらんで」




ってことは……と、一斉に考える。




銀「財前はんと2人でおるかもな」




何の躊躇もない銀の言葉。



恐る恐る白石の顔を伺えば、皆の背筋はぞくっと震えた。




白「………………」




真っ黒な背後を見て、ユウジと謙也は無意識に一歩遠退く。




ユ&謙「「((財前早よ戻って来い…!!))」」




祈るように、必死に心の中で両手を揃えた。




























その頃。




『財前さん財前さん!こっちにも道がありますよっ』



財「ほんまや、結構深いな」




いつの間にか位置が変わり、タタタと小走りで先に行くりんの後を追う財前。


皆の心配を余所に、2人は無人島をエンジョイ中だった。




島の中を歩いていれば、すぐに洞窟?のような場所にたどり着いて。

暗闇が嫌いなはずのりんだが、この洞窟は灯りが灯されているので平気だった。




『あ、行き止まりだ…』




それ以上道はなく、しゅんと残念そうに肩を落とすりん。
仕方がないのでこの場で休むことにした。



微妙な距離を置いて、先程のように座る2人。




『くしゅん…っ』




7月と言えども、夜は肌寒い。


寒そうに腕を擦るりんの肩に、ふとジャージが掛けられた。


驚いて隣を見ても、財前はこちらを見ず前を向いたままで。




『…ありがとうございます』




そのジャージをキュッと握り、りんは嬉しくて微笑んだ。




お互いに話し掛けないので、暫くの沈黙が続いた。







財「…自分、部長と何処までいってん」



『ふぇ?』




意気なりの問い掛けに、間抜けな声を出してしまう。



何処まで…?とその意味を考えて、理解した瞬間ボッと顔が真っ赤に染まった。




『え、えぇと…』



財「キスしたん?」



『!!』




あわあわと慌てだすりんは、肯定の意を表していた。

過剰反応する姿に、財前の口角が吊り上がる。




『ほ、…頬に……』




は?と財前の目が見開かれた。


真っ赤になって小さくなるりんは、その時のことを思い出してしまったのか膝に顔を埋める。




財「(…何やねん)」




てっきり、いただかれてるのかと思い込んでいたのに。


何を遠慮してるのかと、財前はムカつくくらい美形な顔を思い浮かべた。




財「…雰囲気がないんやないか?」



『ふ、雰囲気?』



財「そんな反応やから、いつまでも進展しないんとちゃうん?」




そうかも…と、深く考えるりん。




『…ど、どうしたらいいでしょうかっ』




白石に嫌われたくない。


真っ直ぐな瞳を向けられ、財前は微かに口元を緩ませた。




財「…教えたる」




急に財前との距離が近くなり、りんはびくっと体を揺らした。




財「まず、部長と2人きりになるとして、」



『は、はい!』



財「そしたら、多分向こうは……」




ふと、手を握られる。


自然すぎるその動作に、驚きと戸惑いでりんの鼓動が跳ね上がった。




『あの…っ///』



財「…で、頬を撫でる」




財前の手が右頬をゆっくりと撫でていき、りんは体を硬直させた。




財「(おもろい…)」




まるで、新しい玩具を見付けた子供のように薄く笑う。

そんな余裕の財前とは違い、りんはこれでもかとゆうくらい顔を真っ赤にしていた。
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