beloved

□birthdayデート
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*りんside*




植物園を出て少し歩けば、目的の遊園地に辿り着いた。




『私、遊園地久しぶりです…!』



白「ホンマに?」



『はい。日本では5歳の時以来で。
アメリカでは良く家族と行ってたんですけど、』




あの時は身長制限があって殆んどの乗り物は乗れなかったけど、もう乗れるよね!
(今も小さいけど…)




白「アメリカの遊園地…凄そうやなぁ」



『でも私は、この遊園地も楽しいです』




乗り物も勿論だけど、こんなに楽しい気持ちになるのは、



きっと…一緒にいるのが白石さんだからで。






白「まだ乗ってないのに?」




白石さんは笑いながら私を見た。


さっき思ったことは、恥ずかしくて絶対に本人には言えない。



チラリと隣を見上げると白石さんは案内図に目を通していて、ホッと肩を落とした。




白「何処から行く?ここのジェットコースターめっちゃ怖いらしいで」



『!そ、そうなんですか…』




実は絶叫マシーンがそれほど得意ではない、つまり苦手…なんです。




(でも今日は、白石さんの誕生日だから)




喜んで貰いたい。



好きなこと、させてあげたい。





「絶叫系平気?」と不安そうに尋ねてくる白石さん。


ギュッと拳を握り締めて、向かい合った。




『はい!大好きです!』








20分後…





『うう…』




目が回る…ううん、地球が回ってるよ…



何回転もして、ぐるぐるとまだ頭が回ってるみたい。




白「大丈夫?」



『あ、はい!大丈夫です』




私の顔を覗き込むようにされて、慌てて手を横に振る。



こ、こんなことでくじけてちゃダメだよね…!


と自分に活を入れて、次の乗り物を探すように首を動かす。




白「…そろそろお腹空かへん?」



『へ?は、はい』




予想外な言葉に、間の抜けた返事をしてしまった。



数あるレストランの中から一つに絞って、店内に入る。

それは可愛らしい造りで、顔を動かしてみるとカップルが多いことに気付いた。



中でも私の正面に座る人達が…




「はい、まーくんあ〜ん…」



「あ〜ん…今度はめぐたんにもあげるよ〜」




「もー」と言いながらもその女性は嬉しそうに口を開ける。




(…す、すごい)




これがイチャイチャする、とゆう行為なのだろうか。


目の前に広がる光景に、もし自分がされたら…と想像の世界に入ってしまう。




…………



………………




(ぜ、ぜぜったい出来ない…っ///)




ボンッと顔が一気に赤く染まり、「りんちゃん!?」と白石さんの慌てた声音が聞こえる。



誰かにヘタレ…と溜め息を吐かれた気がした。




『こ、これすごく美味しいです///』




パッと視線を下に向けて、デザートに頼んだ食べ掛けのパフェを再び口に運ぶ。



白石さんはコーヒー(多分ブラック)を飲みながら「良かったなぁ」と微笑んでいて、注文したメニューの違いに恥ずかしくなった。



今がチャンスと、渡しそびれた誕生日プレゼントを思い出して鞄の中を探る。




『あの、白石さん…っ』




意を決して前を見ると突然腕が伸びて来て、驚いて言葉が続かなかった。


口元に白石さんの指が触れると同時に、ドキンと心臓が跳ね上がる。




白「クリーム付いとる」



『!』




ペロリとその指を舐める姿に、カァァと熱くなる頬。

「甘いな」と言う感想を聞いても返す余裕なんてなくて。




(…そういうこと、しないで欲しい……)




じゃないと、心臓が保たない。


これだけで真っ赤になって動揺してしまう私は、あんな風に食べさせ合うなんてとんでもないと…強く思った。



























昼食を終えると、コーヒーカップに空中ブランコ…殆んどの乗り物に乗り、久しぶりの遊園地を満喫していた。




(あ、木馬…)




メリーゴーランドの前を通り過ぎて、自然と足が止まる。




白「…りんちゃん?」



『あ、えと…昔良くお兄ちゃんと乗ったなって、』




どの馬にするか選んだりして、楽しかったなぁ。



今思えば、あの時のお兄ちゃんは仕方なく付き合ってくれてたんだと思う。




はしゃぐ子供達を見て思わず微笑んでいると、白石さんは顎に手を添え何かを考えてるようだった。




白「(…りんちゃんが木馬か……)」



『?』



白「(…全く違和感ないわ)」




ふっと口元を緩め「乗りたいん?」と、何処かからかうように聞かれて、ぶんぶんと首を横に振る。




『今は流石に…っ
観覧車はどうですか?』



白「ええよ。あ、でもまだ一つだけ…」



『??』




歩きだす白石さんに連れられてその後を追えば、




白「まだここ入ってないよなぁ」



『……!!』




足を止めゆっくりと前に視線を送ると、゙お化け屋敷゙がそこにはあった。


中から男なのか女なのかわからぬ悲鳴が聞こえてきて、体が震え上がる。




白石さんと目が合い、思わずゴクンと唾を飲み込んだ。




白「りんちゃ『む、む無理です…っあ、違う乗り物にしましょうよ!』




慌てて、全身を使って否定した。




白「…そっか、暗闇苦手やもんな」




コクコクと大きく頷く。



反対に、しゅんと残念そうに眉を下げる白石さん。




(う…ま、負けない…)




いつもいつも、この表情に心が動かされるのだ。



…けれど、やっぱりズキンと胸が痛んで。






それに、今日は白石さんの誕生日だから。










『……行きます』



白「ホンマ?」



『は、はい…!』




ギュッと拳を握り締めると、頭に手が置かれポンポンと優しく撫でられた。




白「大丈夫。絶対守ったるから」




きゅうっと胸が締め付けられた気がした。




白石さんの言葉一つで、こんなにも勇気を貰えるなんて…不思議だ。


コクンと頷いてから隣を見上げると、白石さんも微笑みながら頷いてくれる。




そして、一歩後ろについてくような形で歩きだした…
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