beloved

□両想い
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*りんside*












『いってきまーす!』




元気良くドアを開ければ、良く晴れた青空が広がっていた。
大きく深呼吸して、制服に乱れがないか見渡してみる。




(よし、大丈夫!)




今日から新学期。


と言っても、うちの学校は三年間クラス替えはなく、高等部に上がるまで変わらない。
担任の入れ替わりくらいかな…?





ふと鞄に手を掛けた時、指元に視線が止まる。




控え目に輝く、シルバーの指輪。




つける時異常な程に手が震えたけど、折角くれたから。
ぬいぐるみとか、お花のヘアピンとか…私の好きなものを、白石さんはわかってて。






でも私は、何も知らない。






(それって…彼女としてどうなのかな)




………………………………
…………か、彼女…!!?



自分で(心の中で)言ったことに激しく動揺する。

まだ言い慣れてなくて、言葉に出すには戸惑ってしまう。





4月14日は白石さんの誕生日で、
一番欲しいものをあげたい…けれど。





白石さんが欲しいものって何かな…?








ぐるぐる頭を悩ませながら歩いていると、既に学校に到着していた。


二年生の教室は一つ階が下で、無事にたどり着きドアを開ければ…




雪「りんーおはよ!」



『わわ!』




教室から全速力で走り、ガバァと抱き付いて来た雪ちゃん。




『おはよう、雪ちゃん』



雪「また一年宜しくね!」



『うん!こちらこそ』




お互いの顔を見合って笑い合う。

ずっと一緒のクラスっていいなと嬉しさを噛み締めていると、雪ちゃんは私の指元をじっと見つめていた。


首を傾げそうになった時、『りん…』と何処か震える声で呟く。




雪「その指輪、どうしたの」




ガシッと私の手を取り、雪ちゃんは自分の目の前に持っていく。


あんまり見られるので、物凄く恥ずかしくなった。




『あ、えと、これは///』



雪「もしかして白石さんから!?」




ズバリ当てられて、カァァと顔が赤くなる。

コクンと頷けば更に盛り上がる雪ちゃん。




雪「愛されてるねーりん、いいなぁ」



『!そんなこと「何々?何の話?」




騒ぎに気付いたクラスメートの女の子達が、いつの間にか集まって来ていた。




「あ、例のりんの彼氏?写真とかないの?」



「見たーい」



雪「うん、あるよ」



『えええ、雪ちゃん…っ』




写真って…
その前にどうして皆知ってるの?



目が合うと少しだけ焦る雪ちゃんによって、その疑問は解決された。




雪「べ、別にいいじゃん。
りんだって私が送った写真待ち受けにしてるくせに」



『!』




カァッと再び顔が熱くなった隙に、素早く携帯を取られてしまった。



実は、紅葉さん→雪ちゃん→私の順番で画像が流れています。(気付いたら送られてて)



白石さんの寝顔だったり、猫と遊んでるところだったり、授業を受けていたりと…すべて隠し撮り写真らしく。



中でも、文化祭の執事服姿のを待ち受けにしてしまい……


それどころじゃないとハッと気付くが、皆は既に私の携帯を覗いていた。




「かっこいいー!てゆーか超美形…」



「予想以上だわ。絶対モテるだろうね」




その言葉がグサッと胸に突き刺さる。


バレンタインデーの時、妹の友香里ちゃんに聞いていたから知ってたけど…




「りんみたいな子ウサギ、簡単に食べられちゃいそうで心配…」




二人はギュッと抱き付き私の頭を撫でた。


私食べても美味しくないのに…と本気で首を傾げていると、予鈴を知らせるチャイムが鳴り響いた。




皆バタバタと戻って行き、私も慌てて席に座る。




雪「新しい担任さー男なんだって」



『そうなんだ』




「どーせおじさんなんだろうけど」と隣で嘆く雪ちゃん。
いつの間に出したのか、雑誌を広げていた。




『…雪ちゃん、ちょっと見せて』



雪「え?珍しい、いいけど」




はいと渡されて、それを目の前に持っていく。


普段は興味を示さないファッション誌だけれど、今は違った。


゙彼氏が喜ぶプレゼンドと書かれていて、思わずドキリと見入ってしまう。




(時計にアクセサリー、香水…)




フムフムと一人で頷いてから値段を見れば…思わずパタンと閉じてしまった。



か、買えない…っ



お財布に入っていたお金を確かめて、ハァと溜め息が零れた。




『ゆ、雪ちゃん…ここに載ってるの全部こんな値段なの?』



雪「それはブランドものだからで……」




言葉の途中で固まってしまった雪ちゃん。


不思議に思い雑誌から顔を上げると、私も体を強張らせた。



少しだけ癖の付いた茶髪に、眼鏡から覗く切れ長の目。
鼻筋もスッと通っていて、何て言うか…この雑誌に載ってそうな人。



その人はニッコリ口角を上げると、私の手から軽々雑誌を奪った。




「はい、没収」



『!』




すぐさま口を開けると同時に、運悪く予鈴が鳴る。
「じゃあホームルーム始めます」とその人は背中を向けた。




「…君、後で職員室来てね」




顔だけ振り返り再び微笑まれれば、教室はキャァと一層盛り上がる。



私はただ一人、呆然とその姿を見ていた。
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