beloved

□桜の下で 前編
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*りんside*



午後から部活があるから、校門まで白石さんに送って貰い、そこでお別れした。


白石さんは、お母さんの買い物に付き合ってくれるみたい。(お母さんが無理矢理誘ったの…)






『お花見、か…』




誰もいない部室で一人ドリンクを作りながら、言われた言葉を思い出す。


明日が楽しみで、口元が緩みかけていると突然ドアが開いた。




リョ「りん、審判やって欲しいんだけど」



『お兄ちゃん!今行くね』




作り終えたドリンクを両手いっぱいに持とうとする。

と、お兄ちゃんの手が伸びて来て半分以上の数を持ってくれた。




『ありがとう、』




「別に」と素っ気なく呟き、お兄ちゃんは背中を向け歩きだす。

慌ててその後を追いながら、優しいなと再認識した。




そうだ、お兄ちゃんも明日のお花見一緒に行くかな?




『あのねお兄ちゃん、明日なんだけど…』




言おうとした瞬間、はたと行き詰まった。


白石さんはただ一緒に行こうって言ってくれただけで……二人でとは言っていないけど。



でも、他の誰か誘ってもいいのかな。
何だか…悪い気がする。




リョ「…何?」



『あ…えと、』




どうしよう…誰か教えて下さい。



頭の中がぐるぐる混乱していると、ドドドとこっちに向かって何かがやって来ることに気付いた。


ね、猫?
違う、あれは…






菊「おっチビーズ〜!!」



『菊丸先輩!』




抱き付く勢いでぴょんと跳ねた先輩。

それを受け止めようと近寄ろうとしたけど、急に後ろに手が引っ張られ…菊丸先輩は地面に落下してしまった。




『せ、先輩大丈夫ですか!?』



菊「うーん…何とか…」



リョ「(…まだまだだね)」




私の後ろでお兄ちゃんがそんなことを呟いていたなんて、全然気付かなかった。




『先輩、今日も教えに来てくれたんですか?』



菊「うんにゃ!それもあるけど、」




菊丸先輩の体を起こすのを手伝い、服についた汚れを払いながら問い掛ける。


秘密だけど…菊丸先輩といるとお姉さんになった気持ちになるんだよね。




菊「あのさ、明日お花見行こうよ!」



『え、』




思わず手を止めた私を見て、菊丸先輩はニッと飾らない笑みを浮かべる。




菊「高1組は全員大丈夫だったから、あとはりんとおチビと桃、海堂だけ!」




「行こ行こ!」ときらきら目を輝かせながら、私とお兄ちゃんを交互に見る。



どうしよう…言った方がいい、かな。




菊「みーんなりんに会えるの楽しみにしてるんだよ!手塚も明後日にはドイツ行っちゃうしさ」



(そっか…部長…)




皆に会いたい。


だけど…



嬉しそうに微笑んだ白石さんの顔が頭に浮かび、なかなか返事が出来ないでいた。




桃「あれー英二先輩!」



海「どうしたんスか?」



菊「おー二人共!実はさ…」




菊丸先輩は二人にも同じように誘う。




リョ「俺は別に「お花見?もちろん行きますよ!なー越前!!」………」



海「…先輩達が行くなら」




桃城先輩と海堂先輩の承諾を得て、盛り上がる面々。


立ち尽くしていると、くるっと菊丸先輩が振り向いた。




菊「よーし、決まりね!りんも行くでしょ??」




全員に一斉に見つめられて、思わず一歩下がる。




(い、言えない……)




ゆっくり、顔を縦に振った。






















『え、じゃあ皆さんも来るんですか?』



《金ちゃんが行きたい煩くてな。今日の夜に出発するらしいわ》




今日のことを話そうと電話したら、白石さんから四天宝寺の皆も東京に来ることを聞いた。


お花見、そんなにしたかったのかな…?



私も、今日決まったことを正直に話したら、




《そうなん?まぁ、大勢の方が盛り上がって楽しいしなぁ》




それを聞いてほっと安心したけど、同時に何故かズキンと胸が痛んだ。




そうだよ。白石さんだって、始めから二人でなんて言ってなかったもん。





じゃあ、何でこんなに悲しいのかな…







《…りんちゃん?》



『あ、ごめんなさいっ』




ふるふると頭を横に振り、気持ちを切り替えようとする。


き、気のせい…っ




『あの、今日はありがとうございました。お母さんの買い物に付き合って頂いて…』



《はは、俺も楽しかったで?》



『本当「あらぁ、本当に?ありがとねー」
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