beloved

□侵入者
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白「皆集まったし、ミーティング始めるで」




壮大な校舎の屋上で、集まる影が8つ。
「昼ごはん買ってきたで〜」とドアが開き、一層賑やかになった。




小「おーきに紅葉☆どれも美味しそーやわぁ」



ユ「小春イクラ好きやったよな?これ食べーや」



金「ワイ牛筋マヨネーズがええ……ってえー!?」



財「………ムッシャムッシャ」



謙「財前んんん!?年下に譲りなさい!」



白「まだ"いただきます"言うてないのに食べたらアカン!!」



小&ユ&紅&銀「「「「(オカンや………)」」」」




白石はいつも通りだが、遂に謙也まで母親役に…と、皆は生暖かい目で見つめた。



何処かの大家族のように白石が合図すると、皆は「「「いただきまーす」」」と声を揃える。(←財前以外)

白石が持参したお弁当を開けた時、鮭おにぎりを頬張っていたユウジが「ゴホォ!」と吹き出した。




財「ユウジ先輩汚いっスわ…」



ユ「ちょっちゃう、見てみぃ白石の弁当…!」



小「いや〜んかわええお弁当!」




其々が気になって覗いてみれば、そこにはメルヘン全開なお弁当があった。


ハートに型どられたおにぎりや野菜。
ウズラの卵には顔が書いてあって、その頭にはリボンの形をしたハムが乗せられている。




謙「…俺、こんな立体的なウインナーのカニさん初めてみたわ」



ユ「白石、まさか自分で…」



白「んなわけあるかい。これは「あ、それりんの弁当やー!」




「前に見たことあるで!」と自信満々に言い切る金太郎に、皆の視線は更にお弁当へと注がれた。




金「旨そうやなーって見てたらタコさんくれたんやで〜」



小「タコさんウインナーのことやね」



白「…金ちゃん、このお弁当もカニさん入っとるで?」



紅「金ちゃん相手にヤキモチ妬くな!」




わざとらしくリアルすぎるそれ(カニ)を箸でつまんで見せる。
そんな白石に、紅葉は何処からか取り出したハリセンでスパーンと頭を叩いた。




小「さっすがりんちゃんやねぇ〜蔵リン毎日作ってもらっとるん?」



白「うん。最近は毎日作ってくれるな。お弁当渡す時な、りんちゃんめっちゃ照れるんやで」




そう幸せそうに話す白石からハートが飛んでるように見えて、皆は「始まった…」と心の中で声を揃えた。




白「今朝も部屋のドアノブに引っ掛けてくれたみたいでなぁ。きっと恥ずかしかったんやろーな」



財「………チッ、バカップルが」



謙「財前くんストップ、心の声抑えてこ」




ある意味素直な後輩に、ダラダラと冷や汗を流す謙也。

目に見えて不機嫌オーラを放つ財前と幸せそうに微笑む白石は、誰が見ても対照的だ。


カーンとゴングが鳴る前に、「そーいや!」とユウジはわざとらしく急に話題を変えた。




ユ「りんって、ここ(合宿所)では聖ルドルフとか山吹のマネージャーなんやろ?何でなん?」



銀「ワシも疑問に思っとった」



紅「一宮さんって子がりんちゃんがここ来る前、青学のマネージャーやってたやろ?何や代われない事情があるんやないの」



小「でも〜りんちゃん可哀想やわ。折角参加したのに…」




端から見ても家族のような青学。
りんも頭では理解していても、皆と一緒にいたいに決まっている。


皆は青学といる時のりんを思い出しながら、うんうんと頷いた。




謙「その一宮さんって同じクラスの子やろ?どんな子なん?」



紅「ん?普通にええ子やと思うで」



金「姉ちゃんええ人やでー!ワイのテニス誉めてくれるし」




「コシマエとも仲ええでぇ」と頬いっぱいにおにぎりを詰めながら話す金太郎。


りん以外に、リョーマと仲の良い女子がいたなんて…!と、皆はそこに大きく反応した。




白「もうりんちゃんウチ(四天宝寺)のマネージャーやったらええのになぁ」



紅「(……こいつ、頭の中りんちゃんでいっぱいか)」




一宮とリョーマの関係には少しも興味がないのか、白石はメルヘンお弁当を味わいつつ話す。

その提案に呆れていた紅葉だったが、はたと思い直した。




紅「あ、でもええかも。うちももうすぐおらんくなるし」



謙「せやった、紅葉1ヶ月だけやったよな」



紅「そ。3ヶ月お店も家もほったらかしたら、大変なことになるしな…」




父子家庭な紅葉にとって、実家のお好み焼き屋と家事が壊滅的な父を放っておくことなど出来ないのだ。

その為、元々合宿の参加は1ヶ月だけと決まっていた。




財「マネージャー変えるとか出来るんスか?あのコーチ達に勝手に決められそうやけど」



小「(光ちゃん…案外ノリノリやね)」




無言でおにぎりを頬張っていた財前が急に生き生きし出したのを、小春は見逃さなかった。




金「え、りんマネージャーやってくれるん!?」



白「金ちゃんも嬉しいよなぁ。りんちゃんの美味しいドリンクが飲めるで?」



金「ほんまか!?紅葉が作るのうっすくてあんま好きやないね「おい」




金太郎の素直すぎる発言に若干傷付きながらも、紅葉はりんがマネージャーをやってくれるなら、と安心していた。


このキャラの濃いチームをまとめられるし、何より…りんちゃん不足だと白石が不機嫌になる心配もない。




謙「でもどうするん?コーチ達に直談判でもするんか?」



白「…俺に任せとき」




不敵に笑う白石にゾクリと背筋を凍らせる面々。


「ミーティングはよかね?」と、今まで眠っていた千歳の声が響いた。




























4月も後半になれば、段々と梅雨の気配を感じる。



ゴロゴロと今にも鳴り出しそうな空を不安気に見つめていた視線を、りんは手元に向けた。


人数分のドリンクを持ち、たたた、と小走りで選手達の元へ走る。




黒「お〜さんきゅー」



天「…ありがとう」



『いえ、今日は特に暑いので、水分補給はこまめにして下さいね!』




ダブルスの試合を終えた黒羽とダビデにドリンクを渡せば、2人共快く受け取ってくれた。




『…………(今日は結わいてるんだなぁ)』



天「?」




髪を1つに結い上げたダビデが新鮮で、思わずじっと見つめてしまう。

ダビデは首を傾げた後、ボッと顔を赤く染めた。




天「(……み、みて、る??///)」




ボッボッと顔が無意識の内に朱に染まる。
顔から湯気が出そうなほど恥じらう相棒の姿に、黒羽はくっくっと声を抑えて笑った。




黒「あ、千石の奴にもあげてくれるか?」



『?はいっ勿論です』



黒「試合終わってからずっとあの調子でなぁ…」




黒羽が指差す方を見れば、隣コートのベンチにその姿があった。

タオルを顔に乗せたまま横になっているようだ。




千石「(…あー…あっつい…)」




まだ4月だというのに、雨が降る前だからかやけに湿気が多い。


無意識の内にTシャツの袖をまくりあげた時、顔に被せていたタオルがずれてしまう。
その隙間から緩やかなウェーブをえがいた髪が映った。




『千石さん、大丈夫ですか?』



千石「!?うわああ!!」




ガタンッと大きな音を鳴らし、思わず飛び起きてしまう。


りんは落ちたタオルを拾い、『驚かせてすみません…っ』と申し訳なく思った。




千石「いや大丈夫!こっちこそ大声出してごめんね」



『熱中症とかじゃ、』



千石「違うよ、今日異様に暑くてバテてただけ」




心配して見つめるりんに、あははと笑う千石。


ホッと安心したのも束の間。ゴロゴロ…とさっきよりも近くで雷が鳴ると、ビクッと身体が浮いた。




『(怖くない怖くない怖くない)』



千石「…………」




自分に暗示を掛けるように言い聞かせぐっと我慢するりんに、「そーだ」と千石は呟いた。




千石「にらめっこしない?」



『へ?』



千石「行くよっにーらめっこしーましょ、わーらうーとまーけよ〜あっぷっぷ」



『!え、え!』




突然の提案に戸惑っている間に、スタートしてしまった。


りんは咄嗟に頬を膨らませて前を見れば、目を思いきり中央に寄せ、口を開けた今までに見たこともない千石の姿が……




『………………』



千石「………………」



『…………………………ぷぷ。あはははっも、もう駄目です…!』




プルプル震えながら堪えていたりんだったが、遂に吹き出してしまった。

お腹を抱えて可笑しそうに笑われると、千石もフッと口元を緩める。




千石「俺、にらめっこ得意なんだよねー」



『お、可笑しすぎます』



千石「良かった」



『?』




りんは笑いすぎて出た涙を拭い、いつの間にか雷の音が気にならなくなっていたことに気付いた。




…もしかして千石は、自分が怯えていることを知って、わざと提案したのだろうか。



「じゃあもう1回勝負!」と笑う千石に、りんは大きく頷いた。




『(本気でやるぞ!)』




千石の優しさに感謝しながら、唇を思いきりつきだして目を細めてみる。自分史上最高の変顔だ。




南「……何してんだ、アイツら」



東「……リア充がすることはわからん」




先程よりも強烈な顔をする千石と向かい合い真剣に勝負する2人は、周囲がざわ…と引いていること等知らない。




りんも羞恥心を忘れかけていた時、クックッ…と笑い声が響いた。




白「りんちゃん……なにしとんの………ふふ……あはははっ」



『(…………お、終わった…!)』




よりにもよって、こんな姿を恋人に見られるなんて。
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