企画
□君限定サンタクロース
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ク「は?ふわふわ?」
放課後のテニスコートに、クリスの声が響いた。
俺は慌ててその口を覆うが、りんは幸い野良猫と遊ぶのに夢中になっている。
リョ「もっと詳しく聞いたけどふわふわってことしか言わないし、」
「何かある?」と聞けば、クリスは暫く考える素振りを見せ、
ク「…りん?」
聞く相手を間違えた。
呆れたようにクリスを見ると、ムッと眉を寄せられる。
ク「何だよその顔」
リョ「…別に」
ク「じゃあ雲とか?」
ふと空を見上げ、流れる白い雲を瞳に映した。
(雲、か……)
さすがのりんもアレが欲しいとは言わな…いや、星や空が欲しいと言っていたくらいだから、十分有り得る。
俺は深く考え、あるものが頭に浮かんだ。
リョ「クリス、この近くに玩具屋ってある?」
゙ふわふわ゙を…見付けた。
毎年恒例の家族パーティーも終わり、ようやく夜になった。
そろそろ眠っただろうと、プレゼントの包みを持ちりんの部屋に行こうとドアに手を掛ける。
その時、扉の向こうからトントンと小さくノックをする音がした。
『お兄ちゃん』と呼ぶ声に、慌てて持っていた包みを隠す。
開けると、ウサギのぬいぐるみを抱き締めたりんの姿。
『お兄ちゃん、一緒に寝ていい…?』
リョ「え、」
『…サンタさん来るの楽しみで、寝れなくて…』
そう言って、りんはぬいぐるみを抱く手にギュッと力を入れた。
今ここで一緒に寝たら困る。
俺の考えてた計画は、
まずりんが眠ってる隙にプレゼントを靴下の中に入れる→そっと気付かれないように退散する
だったから。
『……駄目?』
不安そうに、若干涙目で見上げてくるりん。
…親父とかだったら絶対この時点で降参だろうな。
リョ「……今日は駄目」
『!!』
フイッと視線を逸らして言えば、りんは本当に衝撃を受けてるようだった。
ここで泣かれては困ると、慌てて言い訳を考える。
リョ「自分の部屋で寝ないとサンタも困るんじゃない?」
『そ、そっか……』
りんはしゅんと落ち込んで、『うーちゃん行こ』と持ってるぬいぐるみ(りん言わく友達らしい)に話し掛け、去ろうとする。
俺はホッと一安心したが、ゆるゆると歩いていた足を止めりんは振り向いた。
『お兄ちゃん…おやすみなさい、』
リョ「…うん」
俺は拒んだことがなかったから、りんは多分相当ショックなんだろう。
丸い瞳は涙が溜まり潤んでいる。
頑張れ俺と自分に強く言い聞かせるが、しょんぼり肩を落とす後ろ姿を見つめていたら良心が痛み、
リョ「……少しだから」
気付いた時には、りんの傍にいてそんなことを言っていた。
りんは一瞬目を丸くしてからパァッと花が咲いたように微笑み、『ありがとう』と嬉しそうに俺に抱き付いた。
その頭を撫でながら、心底自分に呆れた。