企画
□君限定サンタクロース
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『ジングルべールジングルべール鈴が鳴るー』
ここ最近ずっと同じ歌を歌ってるりん。
俺はソファーに座りながら、目の前で楽しそうにクリスマスツリーの飾り付けをするりんを見つめていた。
リョ「…りん、」
『ん?』
リョ「クリスマスプレゼント、サンタから何欲しい?」
何でこんなこと聞いてるかって?
俺も知らない。
それも全部あのバカでスケベな親父のせいだ。
それは、ほんの数日前―…
南「リョーマ、ちょっとこっちこい!」
リョ「…何?」
家族団欒の夕食中、不意に呼ばれた俺は、ソファーに寝そべる親父の元に近寄って行く。
手招きされたので少し眉を寄せながら耳を傾けると、
南「お前、クリスマスまでにりんの欲しいもん聞いてこい」
リョ「は?」
突然何を言いだすのかと思えば…と呆れていると、親父はりんを見ながら言葉を続ける。
南「りんはサンタクロースを信じてるからな。親父としては、純粋な子供の夢を壊したくねぇんだよ」
……いや、俺も子供なんだけど。
まぁ俺は幼稚園児の時から冷めてたから、別にいいんだけどね。
南「去年のプレゼントば空゙が欲しいって言って、一昨年ばお星さま゙って言われてな。今年は何言われるか…」
りんが(仮)サンタ から貰っていた、空のジグソーパズルや星の形をしたブローチを思い出した。
親父…考えたな。
リョ「自分で聞けばいいじゃん…」
ハァと溜め息を吐き背を向けたら、ガシッと腕を捕まれて引き留められた。
南「お前が聞いた方が自然だろ?で、ついでに今年のサンタの役はお前に任せた!」
リョ「は?やだ、何で俺が」
「りんの喜ぶ顔が見たいだろ?」と囁かれて、一瞬考えてしまった。
その様を親父が見逃すはずがなく、「よろしくな」と肩を叩かれ強制的にこの話は終わった。
で、今現在に至る。
内心何を言われるのかドキドキしながら、でも自然に問い掛けた。
もう三年生だし、そんなに無謀なプレゼントの要求はしないはず。
りんはキョトンと丸い目を更に丸くして、それからニッコリと笑った。
『んっと……ふわふわ!』
その満面の笑顔を目の前にした時、数秒前の自分が本当に馬鹿だと思った。