企画

□3万打記念小説
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はじめまして。私、たんぽぽ組の担任をしております。



幼稚園の先生になって、もうすぐ一年。
まだまだ新米なんです。












memory




















私のクラスには、双子の兄妹がいます。


名前は、越前リョーマくんと越前りんちゃん。

二人とも双子なのに、全然似てないのよね。
顔もだけど、性格も。


兄のリョーマくんは目が大きくて少し切れ長だけど、可愛い顔をしてる。
女の子とは勿論、男の子ともあまり遊ぼうとしない。一人が好きなのね、きっと。


妹のりんちゃんは、一言で言うと…西洋のお人形さんみたい。
いつもニコニコ笑ってる明るい子。
友達も多いわね。




そんな正反対な二人だけど、とっても良い子。
りんちゃんはお兄ちゃんのリョーマくんが大好きで、いつも一緒にいる。(正確には追い掛けてる)

お昼寝の時間も、気付くとリョーマくんの隣に移動してるし、女の子と男の子が違う遊びをしていても、必ずリョーマくんと同じことをしたがる。


ちょっぴり手がかかるけど、そんなところも可愛いのよね。
























『せんせー見て見て!』



「ん?どうしたの?」




自由時間、一人でせっせとお絵描きに励んでいたりんちゃんが、こっちに向かって歩いて来た。




『これ、りょまにいちゃなの』




りんちゃんが指差す方を見れば、花を持っているリョーマくん?が描かれていた。




「わぁ…上手だねりんちゃん」



『えへへ///』




照れたように笑うりんちゃん。


…ああ、可愛い。




(あれ?この男の子は?)




リョーマくんの隣には、別の(多分)男の子が描かれている。

いつもは、リョーマくんだけなのに。




「この子は誰かな?」




笑顔で尋ねると、りんちゃんは聞いて欲しかったのか、ぱぁっと嬉しそうに笑った。




『これね、くらにいちゃ!』



「く、くらにいちゃ?」




新たなにいちゃの出現!!




『くらにいちゃ、アメちゃんってゆってね、りんにくれたの。また会おってゆびきりしたの!』




ニコニコと話すりんちゃんの大きくて丸い瞳は、キラキラと輝いていた。




良くわからないけど…




「りんちゃんは、そのくらにいちゃが好きなのね」



『うん、好き!』




そっかと笑い、小さな頭を優しく撫でる。


…ふと、絵の中の二人の格好に目を向けると、似てるようで、違う格好をしていた。




「リョーマくんは、マントをしてるの?」



『うん!りょまにいちゃはね、りんのヒーローなんだよ』




4歳にして、既にヒーローがいるのね。

少し羨ましいと感じながら、こっちの男の子の格好も聞いてみる。




「この子は…着物を着てるのね」



『うん!くらにいちゃね、悪い人をね、バシューって斬る人にお名前同じだったの』




ニッコリ嬉しそうに話すりんちゃん。


うん。一生懸命説明してくれる姿も可愛いんだけど、内容はあんまり伝わってないかな…




(あれ、でも)




着物を着てるのに、この子は王冠?をかぶっている。




「何で王冠してるの?」



『あのね、りんが持ってる絵本に出てくる王子様がね、くらにいちゃだったの!髪の毛キラキラってしてたんだよ』




おとぎ話の絵本を良く読んでいるりんちゃんを思い出す。


きっと、その王子様に似てたのね。




…リョーマくん、強力なライバルの出現みたい。




『あ、にいちゃ!』




お外で遊んでた男の子達が教室に入って来る。

と同時に、その輪の中にリョーマくんの姿を見付けて、りんちゃんは素早く掛けて行った。




何だか、適わないわ…




いつでも守ってくれるヒーローがいて、憧れの王子様もいて。
だから、りんちゃんはあんなに幸せそうなのかな。




リョーマくんに頭を撫でられて嬉しそうに笑うりんちゃんを見ながら、もっと大きくなった時に、また会いたいなとこっそり思った。











大好きな人と、ずっと一緒にいられることを願って。












(十年後も、あんなにお兄ちゃんっ子なのかしら…)











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