企画
□3万打記念小説
2ページ/3ページ
はじめまして。私、たんぽぽ組の担任をしております。
幼稚園の先生になって、もうすぐ一年。
まだまだ新米なんです。
memory
私のクラスには、双子の兄妹がいます。
名前は、越前リョーマくんと越前りんちゃん。
二人とも双子なのに、全然似てないのよね。
顔もだけど、性格も。
兄のリョーマくんは目が大きくて少し切れ長だけど、可愛い顔をしてる。
女の子とは勿論、男の子ともあまり遊ぼうとしない。一人が好きなのね、きっと。
妹のりんちゃんは、一言で言うと…西洋のお人形さんみたい。
いつもニコニコ笑ってる明るい子。
友達も多いわね。
そんな正反対な二人だけど、とっても良い子。
りんちゃんはお兄ちゃんのリョーマくんが大好きで、いつも一緒にいる。(正確には追い掛けてる)
お昼寝の時間も、気付くとリョーマくんの隣に移動してるし、女の子と男の子が違う遊びをしていても、必ずリョーマくんと同じことをしたがる。
ちょっぴり手がかかるけど、そんなところも可愛いのよね。
『せんせー見て見て!』
「ん?どうしたの?」
自由時間、一人でせっせとお絵描きに励んでいたりんちゃんが、こっちに向かって歩いて来た。
『これ、りょまにいちゃなの』
りんちゃんが指差す方を見れば、花を持っているリョーマくん?が描かれていた。
「わぁ…上手だねりんちゃん」
『えへへ///』
照れたように笑うりんちゃん。
…ああ、可愛い。
(あれ?この男の子は?)
リョーマくんの隣には、別の(多分)男の子が描かれている。
いつもは、リョーマくんだけなのに。
「この子は誰かな?」
笑顔で尋ねると、りんちゃんは聞いて欲しかったのか、ぱぁっと嬉しそうに笑った。
『これね、くらにいちゃ!』
「く、くらにいちゃ?」
新たなにいちゃの出現!!
『くらにいちゃ、アメちゃんってゆってね、りんにくれたの。また会おってゆびきりしたの!』
ニコニコと話すりんちゃんの大きくて丸い瞳は、キラキラと輝いていた。
良くわからないけど…
「りんちゃんは、そのくらにいちゃが好きなのね」
『うん、好き!』
そっかと笑い、小さな頭を優しく撫でる。
…ふと、絵の中の二人の格好に目を向けると、似てるようで、違う格好をしていた。
「リョーマくんは、マントをしてるの?」
『うん!りょまにいちゃはね、りんのヒーローなんだよ』
4歳にして、既にヒーローがいるのね。
少し羨ましいと感じながら、こっちの男の子の格好も聞いてみる。
「この子は…着物を着てるのね」
『うん!くらにいちゃね、悪い人をね、バシューって斬る人にお名前同じだったの』
ニッコリ嬉しそうに話すりんちゃん。
うん。一生懸命説明してくれる姿も可愛いんだけど、内容はあんまり伝わってないかな…
(あれ、でも)
着物を着てるのに、この子は王冠?をかぶっている。
「何で王冠してるの?」
『あのね、りんが持ってる絵本に出てくる王子様がね、くらにいちゃだったの!髪の毛キラキラってしてたんだよ』
おとぎ話の絵本を良く読んでいるりんちゃんを思い出す。
きっと、その王子様に似てたのね。
…リョーマくん、強力なライバルの出現みたい。
『あ、にいちゃ!』
お外で遊んでた男の子達が教室に入って来る。
と同時に、その輪の中にリョーマくんの姿を見付けて、りんちゃんは素早く掛けて行った。
何だか、適わないわ…
いつでも守ってくれるヒーローがいて、憧れの王子様もいて。
だから、りんちゃんはあんなに幸せそうなのかな。
リョーマくんに頭を撫でられて嬉しそうに笑うりんちゃんを見ながら、もっと大きくなった時に、また会いたいなとこっそり思った。
大好きな人と、ずっと一緒にいられることを願って。
(十年後も、あんなにお兄ちゃんっ子なのかしら…)
あとがき→