企画
□3万打記念小説
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…ども。越前リョーマです。
今俺の隣では、さっき買ったソフトクリームを美味しそうに食べながら歩くりんがいる。
日曜日を君と
今日は日曜日。
以前、あの(バカ)親父のせいで一緒に行けなかった映画を、今日見に来た。
全国大会が終わり、今日は練習が休みだから暇だっただけ。本当にそれだけだ。
でも、
―本当に?行きたい!
…まぁ、りんが思ってたより喜んでたし。
『今日暑いねー』
りんはパタパタと手で顔を扇ぐ。
…あ、ソフトクリーム溶けそう。
「…りん、」
『ん?…え、わ』
りんの手を掴み、それを俺の口元に持って行ってペロリと一舐め。
うわ、甘。
『…あ、ありがと///』
りんはほんのりと頬を赤く染めながら、照れたように笑った。
その反応を横目で見つめ、ひょっとして、俺結構すごいことした?と今更ながら気付く。
でも、双子の兄妹だし。
それ以上でも、それ以下でもない。
俺とりんは二卵性だからか、顔だけじゃなく性格までも全く似ていない。
だから、良く恋人同士に間違われることもある。
(まぁ、俺は別にいいけど)
りんはどう思ってるのだろうか。
…きっと鈍感だから、そうゆう風に思われてることにも気付いてないと思うけどね。
街並みを抜けて、やっと映画館に着いた。
『お兄ちゃん、あれ見るんだよね?』
「うん」
りんは飾られてある看板の中の一つを指差す。
お目当ての映画は、ハリウッド系のもの。
アメリカにいた影響からか、俺もりんも海外の映画は好きだった。
ふと視線を別の看板に移す。
「あれでもいいけど?」
ニヤリ、意地悪く笑い看板を指差せば、その方向に首を動かしたりんの体がビクンと震えた。
『な、何で…?』
「面白そうじゃん」
それは、ホラー映画。
暑い夏にはピッタリだけど、りんは極度に怖がりだからこれは予定してなかったんだけど…
『…や、やだ。絶対やだ』
りんの反応が面白いから。
「…俺、怖がりって嫌い」
『!!?』
そう素っ気なく言ったら、りんは深く眉を寄せ考え込む。
…面白い。
きっと今頭の中では、俺かホラー映画かで悩んでいるんだろう。
「冗談に決まってんじゃん」
『ええ!?』
フッと笑いスタスタと映画館に入って行く。
慌てて着いて来るりんは、やっぱりからかいがいがあるな。
ポップコーンや飲み物を買って、当初の目的だった映画の席に腰を下ろした。
(ホラー映画でも良かったけど、)
りんの嫌がることはしたくないし。
…あ、
また親父あたりにシスコンと言われそうだから、今のはなかったことに。
『楽しみだねーお兄ちゃん』
ワクワクと体を弾ませている妹を横目で見つめていたら、柄にもなく俺まで楽しみになってきた。
本当は、
今日を楽しみにしていたのは、俺のほうかもしれない。
幕が降りて来て、映画が始まる。
それと同時に、そっと小さな手を握り締めた。
(こういう風にできるのも、俺だけの特権)