Short story
□宝物
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ある日、りんが幼稚園で友達を叩いた。
外で遊んでいた男子が帰って来たら、教室で大泣きしている子と怒った顔のりんがいた。
りんは滅多に怒らないし、ましてや手を挙げたりしない。
だから、その様子を見た時は信じられなかった。
先生に理由を聞かれても、りんは何にも言わなかった。
ただずっと俯いて、涙を堪えているように見えた。
幼稚園が終わると迎えのバスに乗り、家の前で降りる。
だけどりんは家に入ろうとしなかった。
「入んないの?」
『…やだ。』
小さく呟くりんに溜め息。
仕方がないから、近くの公園に行くことにした。
公園には草や花がたくさん生えていて、小さな川もある。
公園とゆうよりほとりだ。
りんは静かに俺の後ろからついて来ている。
「…何で叩いたの?」
『………』
「りん、」
『りん悪くないもん』
『りん何も「りん!」
理由を言わないりんに苛立ちが募って、気付いたら大きな声を出していた。
りんはびくっと体を震わせて、『だって…』と小さく呟いた。
目に涙が溜まっている。
『にいちゃも一緒に遊ぶって言ったら、やだって言ったんだもん…喋んなくてつまんないからやだって……つまんなくないもん、りん、にいちゃ好きだもん…優しいもん…
叩いて、りんわるいこ』
俯いて泣きながら言うりん。
そんな姿を見ていたら、胸が苦しくなって、
「ごめん…」
気付いたら、りんの小さな頭を優しく撫でていた。
「ありがとう」
そう言って笑ったら、俯いていたりんがゆっくり顔を上げた。
赤く腫れている目を撫でると、りんは恥ずかしそうに微笑んだ。
その時
りんには笑顔が一番似合うと思った。