beloved

□過保護応援団
2ページ/7ページ






from:白石さん
sub:綺麗やな
----------------


おおっ!めっちゃ綺麗やなー
朝からええもん見せてくれて、ほんまにおおきに。

幸せや。


うん。今度一緒に見に行こーな。


----------------














『……………』




な、何度も何度も、携帯電話の画面を見つめてしまいます…!




朝、いつものように朝練に行くお兄ちゃんを見届けた後、お弁当を忘れて行ってしまったことに気付いて。

それを届けに駆け足で青学に向かう途中、近道に…と思っていつもと違う道に向かったら、綺麗なイチョウ並木を見付けた。



1人感動していると、真っ先に白石さんにも見せたいって思って……





白石さんからのメールを見返していると、自然と頬が緩んでしまう。




雪「りん〜おはよ!!」



『は、はわわわ…!』




後ろからドンッと突進?されて、携帯が手から落ちそうになり慌ててキャッチした。

ほっと安心する私を見て「ごめんごめん」と笑う雪ちゃん。




雪「何?ニコニコしちゃって…白石さんからメール?」



『!な、何でわかるの?』



雪「…顔に書いてあるもん」




えええ!と思ってペタペタ頬を触ってみる。


雪ちゃんは可笑しそうに笑って私の隣で歩き出した。




雪「全く朝からラブラブなんだから。『早く会いたいです』とか『昨日は白石さんの夢見ました』とかでしょー?」



『そ、そんな恥ずかしいこと言わないよ!///』




「いーなぁ」と嘆く雪ちゃんの横で、私の顔はどんどん熱く上昇する。


冷ます為に勢い良く顔を横に振るい、慌てて別の話題を探した。




『雪ちゃんもご機嫌だね…?』




いつも明るいけど、今日は…いつにも増して元気いっぱいな気が…



私の問いに雪ちゃんはピタリと足を止め、「フフフ…」と俯きながら笑い出した。




雪「…とうとう、来たじゃない」



『?何が?』




もしかして、秋の学食のメニューのことかな?
確か今日から、炊き込みご飯になるんだよね。



雪ちゃんも楽しみだったんだね、と仲間がいたことを嬉しく思っていると、




雪「た・い・く・さ・い!!!」



『ふぇ!?』




大声で叫ばれて耳の中がキーンとなった。

近くにいた人達が一斉にこちらを見る。




『体育祭…?』



雪「そうよ!あと2週間後にあるじゃない!しかも今年は…今年は…」




ワナワナ震えだす雪ちゃんは、何て言うか…相当興奮してるみたい。



体育祭、去年は台風だったから中止になっちゃったんだよね。


走ったり体を動かすことが好きな私にとって、楽しみな行事だったりする。




雪「今年はねぇ、お「キャアアア!!」




突如響いた黄色い声。
雪ちゃんと一緒になって振り向けば、その横を1台のバイクが颯爽と通り過ぎた。




『(あ……)』




この学校にバイク通学してくる人物は1人しかいない。

やがて指定位置に止まると、その人はヘルメットを外し振り向いた。




要「おー、おはよ」




ニッコリと綺麗に微笑んだ要先生は、私の担任です。



23歳という若さ、おまけにモデルさんのような端正なルックスもあり、先生は新任してから1ヶ月も経たないうちに女子生徒の人気を集めた。


さっきの黄色い声は日常茶飯事なので、もう驚かないけれども…




雪「要せんせー!おはようございますっ今日もとてもかっこいいですね!」



要「おう、知ってるぞー」




光の速さで先生に近付く雪ちゃん。
は、速い…!




要「りん、はよ」



『おはようございます』




先生はニッと笑い私の頭に手を乗せ、ぽんぽんと撫でる。


いつもいつもこの動作をされるから、きっと先生の癖なんだと思う。




要「朝から元気だね雪ちゃんは」



雪「はい元気ですっ!てゆーか先生、私も呼び捨てにして下さいって言ってるじゃないですか!」



要「はいはい、ごめんね」




頬を膨らませる雪ちゃんに、少し困ったように笑う要先生。



時々、先生の笑った顔が何処か白石さんに似てるなぁと思うことがある。

体格とか全体の雰囲気とか…




要「体育祭?そういや後少しだったな」



雪「はいぃ!しかも、あの聖臨学院と一緒にやるんですよ!?」




盛り上がる2人の会話から取り残されていたけど、ん?と引っ掛かった。




『へ、聖臨学院?』




聖臨(せいりん)学院と言ったら、確か聖華女学院の兄弟校だったはず。


全寮制の男子校だっけ…




雪「え、りん知らないの?毎年、体育祭は共同でやることになってるんだよ!!」



『ええ!そうなの?』




初めて知った事実にポカンと口が開く。

同時に、雪ちゃんがそんなに楽しみにする理由がわかった。




要「体育祭実行委員は今日集まりだからな」



雪「はい!頑張ります!」



要「…言っとくけど合コンじゃないから」




要先生はふと気付いたように、「それから」と私の顔を見る。




要「りん足速いんだって?」



雪「りんスポーツ得意だもんね」



『はぇ?』




突然振られたので変な声を出してしまい、おまけに…2人の視線が痛い。


何だか嫌な予感がして、無意識に一歩後退りした。




要「じゃ、リレーの選手決定」



『……………!!』




呆然と固まる私の頭上から「放課後練習あるから」と降ってくる。



慌てて先生を見れば、まるで肯定しか許さないような、ニッコリと綺麗な笑みを浮かべていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ