夢小説〔ストレイ・フォレスト〕
□花戯
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拍手御礼小説。
−花戯−
大学帰り。啓介は今日もミエスクへ向かう。
いつものスーパーの、一番端のスペースにFDを停めて。部屋中をひっくり返して集めたマツダの雑誌を持って、彼女の営むカフェへ。
「よう」
「いらっしゃいませ、高橋さん」
珍しく店内は盛況で、近所の主婦やおじいさんやらで賑わっていた。啓介は少しがっかりした。
「今日は早いですね。ランチにしますか?」
「あ、ちょっと‥いいか?」
注文を取ろうとした彼女に、啓介は持ってきた雑誌を渡す。
「これ‥俺はもう読まねえから、やるよ」
「え、いいんですか?」
「ここにあるやつで、端が切れてんのがあるだろ?それも持ってきたから、取り替えろよ」
「わぁ…」
沢山の雑誌が入った袋を手渡すと、彼女の腕がぐらっと揺れ、持ち直す。
嬉しそうに袋を覗き込んで、にこっと微笑む。
「ありがとう」
ございます、とは続かなかった。啓介は初めて彼女の素顔を見たような気がした。
その後運ばれてきたランチには、いつもより豪華なデザートが付いていた。
焼きたての、香ばしい匂いのワッフル。熱々のその上で、アイスクリームがじわじわととろけている。その脇には、小さいながらFDと分かる絵が、チョコレートのペンで皿に描かれていた。
「FDは形が特殊だから描きやすくて良かった。‥近所のお子さんとかには結構ウケが良いんですけど」
照れ笑いを残して、彼女はまた接客に戻った。
(‥お子さん、ね)
FDを眺めつつ、ワッフルを口に運ぶ啓介。
彼女の戯れに付き合うのも悪くないなと、穏やかな午後の日差しに目を細めた。
窓から見えるプランターの花達も、日光と遊んでいるように茎や葉を、優しく揺らしていた。
‡後書き‡
思いの外長くなりました。啓介まったり編です。
ワッフルを食べる啓介が見てみたいだけです。