私は怪物になりたい怪物だから、人間の近くにいたらその人の平和も幸せも奪って仕舞う。それは駄目、それだけは絶対駄目
あの人から平和を取ったら島幽になって仕舞うから


そうして私は逃げ出した


昔は沢山あったのにたった一本になって仕舞った道をずっとずっと歩いた

貴方から逃げてずっと歩いた

足がイタイ
あぁまだステージ用の靴のままだった
運動靴かスニーカーにするべきだったな

ずっとずっと歩いた

ずっとずっと後ろにはあの人がいる筈

だって私は彼から逃げているのだから


たった一本の道を
彼を探しながら歩いた
なにもない道
道だけの道を歩く

たまに後ろを振り返りたくなるけど我慢する
振り返ったら戻りたくて堪らなくなるだろうから


でもあの時のように私の所為で誰かが、彼が傷付くのなんて見たくない


彼から逃げて逃げて必死で歩いて


道の先は見えない

きっと先なんてないんだ





ああ





こんなにも
好きなんだ







「泣かないで」









泣いてない




怪物なのに怪物になりたいと願う私に
彼は
泣いてないのに泣かないでと願った







「泣かないよ」







歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く





先なんてない
ずっと足踏みしてただけ

怪物になりたい
人間になりたい
生きたい
生きたい
愛したい
愛されたい
守りたい
好きになりたい
貴方になら
殺されたい





歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く走る歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く走る歩く歩く歩く歩く走る歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩歩歩走歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩
歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩
歩歩愛歩歩歩歩歩歩歩歩歩
歩歩歩歩歩歩歩歩
歩歩歩歩
歩歩



歩 
 歩









 




「泣かないで」





捕まった




後ろからぎゅっと抱き締められ、私は歩みを止めた




「そっちじゃないよ、俺はここにいる」




「どんな君だって君だから、俺の大切なヒトだから」





誰かの台詞かもしれないし、彼の声かもしれない

知らない

けど私は歩くのをやめて仕舞った




歩かないといけないとあれだけ強く思っていたのに


怪物になりたいとあれだけ強く願っていたのに


今は
此処にいたいと、どれだけでも強くつよく願う







歩く


私は歩く

彼と一緒に、確かに一歩






踏み出す








†END†



 

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