04/24の日記

13:21
焼け付く(葉♀→宮♀)
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焼けるような、恋ではなかった
焦げるような恋ではなかったと、今だってそう思う
ただ、輝いて見えただけだった


-焼け付く---


その人は、ただの友達の友達、みたいな人
それでもオレにとっても多分あの人にとっても、知ってはいるかな、程度の関係なんかではなかった
一度高校の時にマッチアップしてから、たまに試合会場で、大学の廊下で、すれ違うたび焦げ付くような視線で見られていたのを知っている
それでも後輩の友人でなければ、あぁまたかと思うだけで声を掛けたりなんかしなかったと思う
赤司が少し気を掛けていたみたいで、やたらとオレにその人の話をしてきたから、
ただそれだけで、じゃあちょっと会ってみようかな
なんて、気まぐれでそう思っただけだったのに、それからも気まぐれで、学科は違うが一応後輩というの立場を利用させてもらうくらいのノリで、ただ本当にそれだけで、仲良くなっただけだった
それだけだったのに、なんでそんな言葉が口から出て仕舞ったのか

「じゃあ、オレ達、付き合ってみよっか」

お酒は入っていたが酔うほど飲んではいなかったのに、その時はその言葉がいちばん正しいと思ったのだ
するりとなんのひっかかりもなく、甘みも苦みも感じない無味無臭のそんな言葉が我が物顔で出てきては、目の前彼女の耳に入って、彼女が「はぁ」と発する空気と共に出てきた

「えっと…、…………はい」

「おう………」

彼女だってなんでそこで肯定の返事を返したのか
湿気でうねっている髪の毛を指で撫で付ける仕草はとてもつまらなそうにしているのに、顔が真っ赤なのが、世界にとって悪だった

そうしてオレ達は(おそらく)付き合うことになった

リードしつつ、リードされつつ、
オレの方が経験豊富、というか彼女が皆無だったからどちらかと言えばオレの方がリードしがちで、夜遅く彼女を家まで送ったりなんかしていた
部屋の前に入る前にはいつももぞもぞと居心地の悪そうな顔をして、小さな声でお礼を言う彼女にまんざら悪い気もしなかった
今更言うがオレは至ってノンケで、今まで女の子と経験を持ったことはない
彼女のことだって可愛いとは思えど、愛しさが募るほど好みなわけではなかった
そのはずなのに、口と口を合わせるまでにひどく時間はかからなかったし、なんの違和感も気持ち悪さも感じなかった
他人のくちの体温は、あたたかい

「送ってくれたから、お礼にちゅーしてやるよ」

なんて言われて殆ど何も考えずに

「マジでか、やったぁ」

とか軽口を返したオレは一体なんなんだ

女の子の唇は柔らかい
口調も態度も刺々しいくらい厳しい人のくせに、とけそうなくらい、柔らかなヒトだった

手を差し出されて手を繋ぐ
ねだられてアイスを奢る
そんなことしかしなかったのは、オレも彼女も同じ性別だったからだとしか言いようがない
キスも2、3回したら飽きて仕舞ったのか、それ以上するタイミングもなかった
もともと小まめに連絡するタチでもないし、徐々に連絡も途絶え、
1年後にはもう付き合っているとは言い難い関係になっていった

だから彼女が卒業する時、就職も決めて研修の間だけ県外に行くことになった時、これが最後だろうなと思いながら送り出す時、別れ際にイタズラみたいにキスでもしてやろうかと思っていた

まぁ結果、出来なかったんだけど

久々に会った彼女はなんだか今まで以上に可愛い気がして、思わず脈絡なくそう伝えて仕舞うくらい可愛くなった気がして、その理由はすぐにわかった

「私、彼氏出来た」

オレは彼女を恋愛の意味で好きではないのだろうし、愛しさ募るほど好みというわけでもない
そう思っていた、それは変わらない
それでも彼女を手放して、私の心臓は心拍を早めた
彼女が好きではない
オレは宮地サンのこと、好きじゃなかった
ただ成り行きで、好きになろうとしただけだったのに

どうしてこんなに心臓は軋むんだろうか

心臓は確かに『苦しい』と、そう言っている
オレは彼女に、恋も愛も与えられなかったはずなのに、
それでもオレは彼女を求めてる

オレは彼女を求めてる


どれだけ卑怯か、わかるだろうか
オレは彼女に愛してほしかった
そして彼女もきっとそうだった
オレ達が同じ性別だったから
似た者同士だったから

本当は彼氏なんか出来ちゃいない、口から出任せのウソだってわかっていても、
もう一度付き合おうなんて言えない


好きだなんてウソでも、言えないのだから



焼けるような、恋ではなかった
焦げるような恋ではなかったと、今だってそう思う
ただ、輝いて見えただけだった
ただ求めていただけだった



END

 

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