11/11の日記
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宮地清志を幸せにしたい
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「誕生日おめでとう」
宮地清志に、宮地が知らない誰かが言った
「君を幸せにしたいから、何か一つ、願い事を叶えてあげるよ」
宮地は何故だか本能的に、この知らない声が本当に、なんの裏も駆け引きも見返りもなく純粋にそう言っていることを理解した
純粋に宮地清志を幸せにしたいと“声”は願っていた
ならば何故一つだけなのだろうかと疑問に思えば、問う間もなく“声”が返ってくる
「いくつでもいい。一つと言った方が考えやすいと思っただけだよ。ただし、そのかわり、君は本当に幸せにならなければいけない。軽率な願い事をして、間違って不幸になったりしたらいけない。だからじっくり考えて」
宮地清志は考えた
次の試合で優勝したい
次の実力テストでいい点をとりたい
そんなことはこれっぽっちも考えずに没だ
バスケが上手くなりたい
頭がよくなりたい
それもダメだ
そんなことを願うほど、宮地清志はバカではない
「次のみゆみゆのライヴのチケットが当たりますように」
“声”は呆れて笑う
「みゆみゆと恋仲になりたいという願いさえ私には叶えられるのに、そんなことでいいの?」
確かに、そう考えればバカらしい
ならば
「ずっとバスケがしていたい」
独り言のようにそう言えば、
「本当に?」
と間髪入れずに返ってくる
「本当にそれでつらくない?君はいつかバスケを辞める。高校を卒業したら辞めるつもりだろう、それはお前が選ぶ道だ。それを否定するのか?お前はこの秀徳高校のチームメイト以外とするバスケが受け入れられるのか?」
宮地清志はいずれバスケを辞める
それは仕方のないことだ
何故なら、今この瞬間、このメンバーでするバスケが一番幸せだからだ
ならば、
なんでも叶えられるというならば、
物理法則さえもムシ出来るというならば、
「高校3年の1年間をずっと繰り返していたい」
それを聞いて“声”は微笑んだ
「確かにそれが一番幸せな道だろう。けどダメだ。冷静に客観的に考えてそれは1人の人間が耐えられる道じゃねぇよ、ちょっと考えればわかるだろ」
宮地清志は考える
なにが自分にとって幸せか
一番の幸せとはなにか
「わかった」
宮地清志は顔をあげる
「オレは」
「自分の力で幸せになるから」
「試合もテストもライヴもバスケも人間関係もなにもかも自分でなんとか出来るから」
「自分の力で幸せになんなきゃ、それは幸せなんかじゃないから」
「だから」
「いらない」
そうか、と“声”は言った
「じゃあ、お前が不幸になった時にまた来るさ」
「けどその様子じゃ不幸になんかなれなさそうだな」
“声”は笑う
「言ったからには、幸せになれよ。誰の力も借りず幸せになれよ。世界一、幸せになれよ」
「宇宙一幸せになんなきゃ、轢くぞ」
“声”は消え、宮地清志は眉間に皺を寄せて笑った
「なれるに決まってんだろ、轢くぞ」
END
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