夢2

□手を伸ばしても届かないことを知りながら僕は今も足掻いてる
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「こんにちは」


今日も聞こえる優しい声におれは顔を上げた。いつからか出会った日も忘れてしまいただ彼女がここに来てくれる信じておれは待つ。こんにちはと挨拶を交わしながら彼女はおれの隣に座り込む。名前以外は知らない、あまりおれと関らないほうがいいだろうと判断して世間話しかしないのだ。


「毎日ここに来るのが日課になっちゃって」

「おれもだよ」

「雁夜さんと世間話するの面白くて」

「名無しさんは・・・毎日おれに会いに来てくれるけど、彼氏とかはいいのかい?」

「彼氏なんかいないですよ」


余計なことを言ってしまったかと座っている足元を見つめていると彼女は気にしないでと言ってくれた。にこりと笑う彼女の表情が好きなのだろう、だが手を伸ばしても届かないことなどわかっているはずなのに何度もこうして会ってしまっている。このまま彼女を傷つけてしまうのは少々心残りにもなる。


「考え事、してた?」

「あっ、いや。何でもないよ」

「そっか、それに今日は雁夜さんのお誕生日だし」

「あっ・・・」


そういえば忘れていた。誕生日などもう来ないと思っていたから。


「わたし、今日で最後にします。雁夜さんに会うのを」

「・・・・・・」

「好きでした、あなたのことが」

「名無しさん・・・」

「だから今日でお終いです」

「おれも、君のことが好きだった」

「ありがとうっ・・・お誕生日おめでとう、雁夜さん。さようなら」


最後の笑顔を見つめながらおれの前から名無しさんはいなくなってしまった。追いかけてしまおうかと思ったがここまでなのだから追いかけてはいけない衝動に駆られた。この世に神がいるのなら今のおれを恨むだろう一人の男として最後まで幸せにはなれないことを憎むだろう。好きだと言ってくれてありがとう。


「奇跡が起きるなら・・・また君に会いたい」












20120322




雁夜ハピバ






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