「なぜ我もこんなことをしなければならんのだ」
居候の身にもなって欲しいとアーチャーことギルガメッシュに言う。不貞腐れた顔をしながら名無しさんの隣を歩く。これ以上機嫌を悪くしないようにと名無しさんは今日の献立を彼の好きなものにしようと頭を悩ましていた。
「買出しを頼まれたのはギルガメッシュのはずなんだけど」
「貴様、雑種の分際で我一人で行かせる気か。下部がいなければこんなことはせん」
「わたしが下部ですか・・・」
「名無しさん以外に誰がいる」
「そうですね」
それにしても今日に限って寒い。早く教会へと戻って温かいココアでも飲みたい。ぼんやりと雪ばかり見ているとギルガメッシュに右手を掴まれていた。たまに見せる優しさは彼なりの愛情表現なのだろうと思うようにしている、いつも嫌味を言われてからかわれるだけなのに。私といても彼は楽しいのだろうかと余計なことばかり考えてしまう。ありがとうと言えば何のことだと話を逸らされてしまった。
「ギル、うあっ」
「っう」
うっかり滑ってしまい繋いでいた手を離さないままギルガメッシュと名無しさんは雪の中へと転んでしまった。雪だらけになった体を起こしながら名無しさんは彼の方を向くとこれ以上にないほどの怒りを名無しさんに向けていた。宝具を発動されたらどうしようと目を瞑っていると唇に違和感があった。驚きを隠せずに瞳を開くと目の前にギルガメッシュの顔があった。綺麗な瞳だと観察していたら唇が離れ頭に拳骨をされる。痛い、相当怒っている彼に謝るとまた服の襟を掴まれキスをされる。
「キスだけでは許さぬ」
「ご、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
「この我に恥をかかせた罪、貴様の体で償え」
「そんな・・・キスすら初めてだったのに、ギルガメッシュの馬鹿」
「なに、初めてということは体のほうも処女ということか」
「うっ」
「仕方がない、我が貰ってやろうではないか。有り難く思え、名無しさん」
高笑いするギルガメッシュを置いて名無しさんはそそくさと立ち上がるとその場から走って教会まで帰っていってしまった。買い物を全て置いていってしまったから後でギルガメッシュに怒られるだろうという覚悟はあった。男を知らない名無しさんはキスをしてきた相手の男の顔を思い出しながら顔を真っ赤にする。好きだという感情がわかってしまい戸惑いを隠せなかった。もう少しで帰ってくる男にどのような顔をすればいいのかわからないまま名無しさんは扉の前でしゃがみこんだ。
「まったく、可愛げのない女だ」
たまにはこんな日もあっていいだろうと呟き名無しさんを抱き寄せる。ギルガメッシュの顔は真っ赤になっているのがわかった。寒さか照れているかは彼にしかわからない。
20111209
(朝から散々だった)
(雪に溺れるのもいいでしょ)
(その口、塞ぐぞ)
(・・・・・・)