雑食

□絶対、逃げよ。
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うちの家は代々情報屋。
情報入手の為なら、芸能デビューもするし、政治家にでもなっちゃう。
とりあえず、情報を手に入れる為に何処にでも何にでも溶け込め!が我が家のモットーである。
そんな私の母親は有名大女優、父親は国会議員。でも、我が家はどんな悪党にだって情報を高値で売る情報屋。
別の職業で金稼げてんじゃん!って反抗した事もあったが両親はそういう表舞台に立ちつつ悪いことをしちゃうスリルが大好物。
情報屋だとは誰にもバレていないのだから我が両親ながら良い腕だと思う。
そんな両親の間に生まれた私もまた情報入手の為に何処にでも何にでも溶け込むのだ。

「ナナシ、ビッグ情報だ!」

「なに?鼻息荒くして気持ち悪いよ」

「…お父さんに気持ち悪いとか言わないで…」

しょぼんと落ち込んだ父。
ぽふぽふ、と念入りにファンデーションを叩き込む母が傍でクスクスと笑っていた。

「で?何の情報なの、ダーリン?」

「よくぞ聞いてくれたハニー!」

ジャジャーン!と薄っぺらいチラシを見せびらかす父。

「ゾルディック家、お見合いパーティーのお知らせだ」

「あら、凄い」

「一部、上流階級の年頃の娘が居る者にだけ配られたらしい」

「貰ったの?」

「貰っちゃったー!」

えっへへー!と無邪気に笑う父。
真面目に仕事して出世するもんだなぁ!とルンルンなところ申し訳ないが、その内容に待ったをかけたい。
上流階級の年頃の娘が居る者にだけ?

「待て待て、それって私に行けって言ってんの?」

「そうだよ?」

「ゾルディック家の情報は高値が付くわよ〜!!気合い入れて行きなさい!」

「死ぬけど!?」

「大丈夫、パパが鍛えてあげたでしょ?」

「そうよ。ママだって毎日欠かさず毒を盛って来たんだから…」

「どっちも死にかけてるけどな!!」

死ななかったんだから良いでしょ?と両親に揃って首を傾げられた私の気持ちを誰が察してくれるというのか。普通にツライ。

「観光名所になってるわりに、ゾルディック家内部の情報は少ないからな」

「顔写真一枚でも高額よ!」

「そもそも誰とのお見合いパーティーするとか書いてないの…?」

「……書いてないなぁ」

「そんなもん誰が参加すんのよ!!」

「ママが若くて独身だったら喜んで参加するけど?だって、大金持ちよ?暗殺一家という点に目を瞑っても問題無いほど大金持ち!」

「暗殺一家である点を重要視するべきだと思うけどね」

「そうだぞ。暗殺一家である所が重要なんだ!ここで行かない選択肢なんて無い!情報屋の名が廃る!」

「えー…」

「とりあえず、顔写真の一枚は入手してきなさい。ママ命令よ!」

「ええー!!!」

+

母セレクトのパーティドレスを身に纏い。
ゾルディック家の馬鹿デカイ門を通り抜け、ほぼ獣道じゃねーか、という道を長々と歩かされ、ようやくゾルディック家の屋敷へと辿り着いた。
そこらかしこの金持ちのお嬢様連中はヒールで長い道のりを歩かされ、すでにひーひー言っている。大変可哀想である。
しかし、豪華絢爛。
うちも母の趣味でなかなかに派手な家だが、ゾルディックはそれ以上に派手だ。
うちの母と気が合いそうだな、と思い主賓が来るのを待っていると、顔が妙にメカメカしく、ドレスはめちゃくちゃ豪華な女性がやって来た。あれ、絶対にゾルディック家の奥様だ…。ゾルディック家パネェ。

「あらあら!皆様、ようこそゾルディック家へ!」

甲高い声に歓迎され、ザワザワと騒がしかったお嬢様連中も息を飲み静まり返っていた。
見た目のインパクト強過ぎィ!!

「これより、お見合いパーティに参加する方を選別致しますので今しばらくお待ちを!」

へ?
すでに参加してるんじゃないの?と思った私の横に立っていた何処ぞのお嬢様が一人、執事に退出するように言われていた。

「なに!?どういうこと!?」

「お足下が大変汚れておりますし、汗もかかれておりますのでご退出下さいませ」

「あんな所を歩かされたんだから当然じゃない!!」

隣で怒鳴り散らすお嬢様。
執事と言えどゾルディックの関係者に反抗すると怖いと思うんだけどなぁ、と眺めていたら執事の人がチラリとこっちを見た。

「失礼致します」

「はい?」

「こちらのお嬢様を参考にご覧下さいませ。お足下の汚れも無く、汗もかいておられません」

「……」

「……」

なんでアンタ、汗一つかいてないのよ!?と目で訴えられたがそんな事言ったって…、あの程度の道のりで汗をかくほどお嬢様らしい生活してないから。っていうか、お嬢様じゃないし。

「ご納得頂けましたら、ご退出下さいませ。あの程度で疲れるような人間はこのゾルディック家には相応しくありません」

「「……」」

ゾルディック家、こえー!!

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