onlooker
□Hello,hello.
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四月
空座第一高等学校 入学式当日。
クラス表が貼り出された掲示板の前は騒がしかった。
不特定多数の学生達が親しい友と同じ組になった喜びではしゃいでいるからではなく、一人の不運な少年の不幸の嘆きによるものであった。
「黒崎と茶渡ーーーー!!!!!!!!」
その言葉を皮切りに、およそ高校生とは思えないような風貌の男達が不運な少年の周りに集まってきた。
何やら不穏な空気に近くにいた女子学生達はおろか、少年の友人であろう男子学生までもがその場から充分な距離を取った。
不運な少年こと、浅野啓吾は半泣きになりながらも必死に弁明をしていたが全く伝わらなかったらしく厳つい男達は殴りかかってきた。
が、
その拳は浅野に当たることは無く、逆に彼等が殴られ地面に倒れた。
実は浅野はかなり喧嘩が強かった――――などという訳では勿論無く、頭を抱え地面に伏せている彼の前に立っている二人の少年がしたことだった。
その二人の少年は、オレンジの髪が目立つ黒崎一護と、かなりの巨体の少年茶渡泰虎だった。
「くっ、く、黒崎と茶渡ーーーー!!!!?」
命の恩人である彼等を見て浅野の顔は青褪めた。
不良中の不良、彼が言うキング・オブ・不良の二人が揃って目の前に立っているのだから当然と言えば当然だが。
黒崎と茶渡はそんな浅野を気にすることもなく少し離れた場所に避難していた彼の友人、小島水色に声をかけ何かを話していた。
「交渉成立!!」
その声と共に黒崎と茶渡はガラの悪い連中達の所へ駆け出して行った。
そんな彼等を多くの生徒が見詰める中、一人すごく不快そうにその場を後にする女子生徒がいた。
肩までの黒い髪に右足首に赤い石のアンクレットを着けたその少女は、墓標のときと同じく小さな声で
「霊圧があたる」
と呟き、校舎の中へ入って行った。