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□38章
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左之さんの思いがけない告白から数日が過ぎたこの日…。
私は庭の掃き掃除をぼんやりとしながら行っていた。
あの時どうやって屯所まで帰ったのか正直覚えていない、「俺の一方的な想いだから返事はいつでもいい」と言う左之さんの声だけが鮮明に残る。
左之さんのことは嫌いではない、むしろ――――…好き、なんだろう。
こんな気持ち初めてで、会いたいのに…話したいのに――…。
会ったらどんな顔をしたらいいのか、何を話したらいいのか分からない。
そのせいで、ここ最近はまともに左之さんと会っていないし、話していない。
いつの間にか隣にいてくれた左之さんに、数日間まともに会っていないだけで、ひどく寂しく感じる。
その刹那、ふわりと肩に何かが羽織られた。
久々に近くで感じる気配とその香りで誰なのかは直ぐに分かった。
「左之さん…」
「こんなとこで突っ立てんと風邪引くぞ?」
後ろを振り向けば、数日間私の頭をいっぱいにさせた左之さんの姿。振り向くとき目に映った浅葱色…。
巡察から帰ったばかりなのだろうか、肩にかけられたのは、新選組の羽織だった。
「まだまだ冷えるから気を付けろよ?」
そういつもと変わらない表情で声をかけると、直ぐに何処かへ行こうとする左之さん。
「あ…っ」
遠ざかる左之さんの腕を無意識に掴んでしまった私。
驚いたように振り向く左之さんに迷惑だっただろうと、小さな声ですいませんと誤った。
「どうした、琳珈?」
「その…」
無意識だったため、どうしたと言われても何も言えず言葉がつまってしまう。
「えっと…今日はいいお天気ですね!」
「……ふ、…っははは!」
ようやく私が絞り出した言葉に、一瞬きょとんとした左之さんだが直ぐに大笑いし始めた。
「はー…っ琳珈、空見てみろよ」
素直に空を見上げれば、快晴とは縁遠いどんより曇り空。そういえば朝からこんな天気であったのを思い出す。
「う…」
「相変わらず、お前は可愛いな…」
「い、意地悪しないでください!」
「仕方ねえだろ、好きな女苛めるのが男ってのは好きなんだからな」
「っ…あ、えっ…と//」
私の頭に左手を置き、熱い視線を送る左之さん。 「好きな女」と言われ私の頭は軽いパニック状態に陥り、端的な言葉しか出てこなくなった。
「悪い…、俺のせいだって分かってるけど、最近はお前から避けられて、これでも堪えてるんだぜ?」
ごまかすかのように、私の頭に置いた手を動かし、ポンポンっと軽く叩かれた。
「なあ琳珈、俺これから食材の買い物頼まれたんだ…良かったら一緒に行ってくれねぇか?」
無理にとは言わねぇけど…と視線を下げ、少し言葉を濁らせる。
もちろん断る理由なんてない。二つ返事で「行きます」と答えた。
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