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□38章
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「うん。そうだよね、ありがとうお千ちゃん!私今から左之さんとちゃんと話してくる」
「そっか…そうね、まだ話していたかったけど、頑張ってきてね琳珈ちゃん」
「ありがとう、またねお千ちゃん」
お茶屋を出てからいつも新選組が封書を届ける商店へと向かう。
途中、近道でもある細い路地へと足を進めていると…。
「こんな所で何をしているのだ東雲の巫よ?」
「っ…風、間さん…」
そこにいた人物は、何かと私と千鶴を狙い、新選組と敵対している薩摩の風間さん。ついこの間島原でもあったばかりだ。
直ぐ様危険だと感じた私は腰にさしてある刀に手をとった。
「ふ、何も怯えぬことはない。まだお前を連れていくつもりもないしな…『その時』が来たら幕府の犬の前で正々堂々拐ってやる」
「な、その時ってどういう…「琳珈!!」
耳に入ってきた私の名前を呼ぶ声…風間さんの姿を見て、恐ろしいほどの形相を放つ左之さんの姿がそこにはあった。
「風間テメェ…」
「何だ、やはり一人ではなかったのか」
そのまま私を庇うように風間さんと私の間に割り入る。
そんな直ぐに息切れをしないはずなのに、こめかみから伝う汗と息切れ。
きっとお千ちゃんから話を聞いて一生懸命探してくれたのだろう。
「ふん…心配せずともしばらくは千鶴も琳珈もお前たちに預けておいてやる」
首を洗って待っていろ…と一言残し、私たちの前から姿を消した風間さん。
「琳珈…」
いつもよりワントーン低い彼の声に私は肩を揺らした。
「どうして茶屋で待ってなかった」
「ご、めんなさい…」
初めて本気で怒る左之さんに目が合わせられなかった。
どうしようかと考えていたら、左之さんの影がだんだん近づいてきて…。
「!…っ」
そして私の腰と背中に左之さんの両腕が離すまいとがっしりと回った。
「無事で良かった…っ」
私の肩に顔を埋めながらいつもの左之さんらしくない弱々しい声でそう言った。
(心配してくれたんだ…)
私のこと本当に想ってくれている…。それがひしひしと触れる肌から伝わって涙が出そうだ。
……私も自分の気持ちに正直になろう……――。
「左之さん…お話があります…――夜になったらお部屋にお邪魔してもいいですか?」
今日こそ貴方にこの想いを伝える――……。
end