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□38章
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「だいたい買い終わったな」
「沢山買いましたね」
「お前可愛いから店の店主がおまけで沢山野菜やらお菓子やらくれたしな」
「か、可愛いなんて、そんな!」
左之さんが背負っている籠の中には、お店で買った野菜以外に、ご好意でもらった食材が詰め込まれている。
「さて、次は土方さんに頼まれた封書だな…」
「…あら、もしかして琳珈ちゃんじゃない?」
不意に自分の名前を呼ばれた。声がしたほうに顔を向けるとお茶屋さんの長椅子に腰掛ける見覚えのある女の子。
「もしかしてお千ちゃん?」
そこに居たのは島原に潜入する時に、着物やらお化粧やら色々とお世話になったお千ちゃんだった。
「久しぶりねぇ!元気だった?」
「ふふ、元気だよ」
私の手を両手を握りブンブンと握手を繰り返すお千ちゃん。
「女同士積もる話もあるだろうし、俺は土方さんの使い行ってくるからお前はここで話してろよ」
「そうよ、私も琳珈ちゃんと話したいしっ」
「じゃあ…お言葉に甘えて」
「あぁ、悪いが琳珈のこと、ちっとばかし頼んだ」
「任せといて」
じゃ後でな、と手をあげ歩き出す左之さんの姿をずっと見ていた私。
「琳珈ちゃん、彼のこと好きなのね」
「ぇ……え!」
「ふふ、一目見て分かったわ…琳珈ちゃん、恋する乙女の顔してるもの」
「そー…か、な?」
「とっても、ね。参考にならないかもしれないけど、良かったら話しぐらい聞かせて?」
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お千ちゃんの言葉に甘えて、色々相談に乗ってもらった。
「――……で…そ、の左之さんから、その…す、好きだって言われたけど…「両想いね!!」
それまで私の話をうなずきながら聞いていたから、突然のお千ちゃんの反応にビクリと身体を震わせた。
「もちろん返事はしたんでしょ?」
「………」
「…もしかして返事してないの?」
私の反応を見てか、そんな質問をするお千ちゃんにコクりとうなずく。
「左之さん本当に優しくて格好良くて…私なんかにはもったいない人だよ…」
そうは言ってみたけれど、お千ちゃんには言えない一番の理由が私がこの時代の人間ではないこと…。
好きになってもずっといられる証拠はない。その結果左之さんを傷つけてしまう…。
――…なのに、私の中で左之さんを好きになる気持ちがどんどん強くなる。
これ以上好きになったら、いつか来るかもしれない別れが怖いんだ…。
そんな自分勝手な考えが嫌になる。
「私からは何とも言えないけど…でも彼とちゃんと話し合ったほうがいいと思うわ。
自分の気持ちに正直に伝えて。」
勇気を出して琳珈ちゃん、とお千ちゃんから心強い応援。
(そう言えば、私左之さんにまだ自分の気持ちも、想いも伝えてない…)
私も彼の気持ちにちゃんと答えたい―――………。
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