文豪の夢世界
□第一章 トリップ
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あたしは自室でハマった文豪ストレイドッグスを読み返していると、いつもの感覚が来るとともに関連書籍が光りだした。
どうやら、今回はこの世界に行けるようになったらしい。
いつもなら紅蓮たちに告げてから行くのだが、生憎と神将たちは神々の集いに参加しなくてはならず誰もいないため、置手紙をしてからトリップした。
目を開けると、何故かベッドで寝ていた。ユルユルと首を動かし、見覚えのある医務室だったのでどこにいるのか把握することができた。
とりあえず、同じマフィアとはいえ全く違うマフィアのところではなかったことに安堵した。
ボッー…っと天井を見上げていると、医務室に誰かが入ってきた。
「あっ、良かった。気がつかれたんですね。」
「(敦…)あっ、あの…ここは……?それに、どうしてあたしはここに…」
「えっとですね……貴女は、この『武装探偵事務所』の前で倒れてたんです。だから、ここにいるんですよ。
あの、何処か気分が悪いとかは無いですか?」
「はい。お陰様で…。そう言えば、まだ名乗ってなかったですね。私は安倍結衣です。貴方は?」
「僕は、中島敦です。つい最近、ここに入ったんです。新人なので、覚えることがいっぱいです…」
敦は少しだけ辟易した声と表情でそう言った。
「そうなんですか。(っ‼︎誰か近づいてきてる…)」
あたしがそう言うと同時くらいに医務室の扉が開いた。
「おや?彼女、目が覚めたんだね」
「あっ、太宰さん」
「(太宰さんか…面倒くさいんだよねこの人色々と…しかし、ちゃんと入社するまでは知ってるのは伏せよう……)あの、この方は…?」
あたしが敦に聞いていると、太宰さんはキラキラとした顔であたしに近づくと手をスッと優しく握ってきた。
「(あっ、コレはアレが来る…)あっ、あの…?」
あたしは内心で構えて、表では困惑気味に膝をついている太宰さんを見下ろした。
「何と可憐で可愛らしい…そして何処か儚げで、そう…まるで桜の花びらのようだ……美しいお嬢さん…どうか、私と心中してくれませんか?」
「(しません‼︎)心中…ですか?あの、私には将来を誓い合った相手がいるので無理です」
「そこをなんとか…‼︎」
「太宰さん‼︎結衣さん驚いてるじゃないですか‼︎すみません、この人いつもこんな感じの人なのであまり気にしないで下さい……」
「はぁ……あの、一つお願いしたいのですが…」
「心中のお願いなら是非‼︎」
「(違う‼︎)実は、働けるところを探しているのですが…ここで働かせて頂きたいと思いまして…」
「へっ……ここ…ですか?」
敦の言葉に頷く。
「こう見えて、武術と剣術は嗜んでおりまして…異能力者ではないですが、多少は戦力になるかと…」
あたしは2人を交互に見て、「お願いします」と頭を下げた。
「……どうしましょう、太宰さん…」
「ふむ…私たちだけでは決められない。社長に指示を仰いでくるから、起きられるようなら事務フロアで待っていてくれ給え」
「分かりました。えっと…起きられますか?」
「大丈夫ですよ」
あたしはベッドから降りて、軽く伸びをする。
「それじゃあ、行きましょうか」
「はい」
あたしと敦は事務フロアに向かい、あたしはイスに座らされた。敦から事の顛末を聞き、国木田さんは見極めるようにあたしを見ているのがわかる。
しばらくボッー…としていたが、暫くして太宰さんが来た。