頂き物

□つんでれとでれつんのちがい
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「きょーやってさぁ、ツンデレだよね」






少し離れたところにいた彼にふと思いついたことを言ってみる。

「無駄口たたいてる暇あったら手を動かしてよね」

にべもない。
もーちょっと反応してよ。つまんない。

「お仕事もー終わったよー」

これは本当。
今日のノルマが終わったことを最後に渡された書類をひらひらと振ることで示す。

「じゃあお茶」

「はいよー」

グラスに氷を入れて麦茶を注ぐ。

冷蔵庫完備の活動場所っていいよねー。しかもここクーラーもついてるし。
風紀委員が応接室のっとったって話。この点についてはきょーやはいい仕事したと思う。緑化委員のやつらにはお気の毒様としか言えないけど。
まあ普段ここを使ってるの、きょーやと草壁っちと私だけなんだけどね。大勢入ってきたりしたらきょーや怒って咬み殺し発動だから。最大定員四名様なのです。
一般の脳味噌筋肉族、通称脳筋族的風紀委員諸君は一個下の階の会議室を使用中。そっち側で山と出される報告書を持って上がるの大変だから、同じ階にしないか打診中。先生に、じゃなくてきょーやに。

最後に個包装のせんべいを一枚お茶請けに出して、机の上におく。
同時に処理済の書類をまとめてファイリング。整理はしておいたから楽。明日あたり草壁っちが持ってってくれるでしょ。

「はい、どーぞ」

「……ありがと」

「…………」

「……何?」

「べっつにー?」

ちゃんと御礼言えるのはえらいことだと思うってだけですよー。

話をそらす口実に手元の書類に目を落とす。
爆発による校舎内の器物破損。この報告書、今日だけで七枚は見た気がする。ふつーの学校なら、爆発は一大事だよね。並中じゃ最早日常の一コマだけど。最近は消防隊も来なくなってる。狼少年じゃないけど、これってやばい。火事が起きたらどーするつもりだ。

と、閑話休題。
うあー。これでまた修繕費がかさむ。まぁ、人に被害が出てないからまだよし。それに出所不明の寄付金がたまってんだよねぇ。きょーやは出所知ってるみたいで積極的に使えって言ってるからいいけど。



んー、でもやっぱ、なぁ。

「やっぱきょーやはツンデレだよ」

そっぽ向いて御礼言ったりするとことか特に。

「ヒバードもそー思うよ、ねー?」

「ネー?ネー?」

同意するように鳴きながら羽ばたいて、飼い主の頭の上に止まるヒバード。
かわいい。
癒されてたら飼い主のほうが立ち上がった。時計を確認して、ってもう6時じゃん。

「きょーや、下校点検?」

じゃーそろそろ帰る準備しなきゃね。
いそいそと書類を片付けようとしたらすぐにストップがかかる。なんでぃ。

「まだ未処理の仕事いっぱいあるでしょ」

いや、確かに書類は山と残っているけど。けどさ。

「これ並中のじゃなくて並盛町全体に関わる書類じゃん」

こーゆーの役所の仕事でしょ。一中学生の仕事じゃないやい。
不貞腐れて椅子に懐いていたら、いつのまにか近くにいたきょーやが一言。


「冷蔵庫の中のものなら食べてていいから」


……いやったぁ。




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