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□煌めく太陽の君
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 たまたま柳くんとお弁当を食べるのが一緒になり、たまたま彼が私に声をかけてきた。秀才で神秘的な彼からは想像しえない言葉を聞いた私は、しばらく返事ができなかった。どうした?と尋ねられてやっと、はい!と返事をした時には、柳くんがクスリと笑っていた。その内容は、彼女にお弁当を作ってもらえるなんて男の夢だろうな、と言うことである。ちなみに柳くんと私は一切そういう関係でなく、むしろ話したのも今日が初めての気がするのだが。

「えっと…、柳くんも彼女を作ればいいかと」
「ちなみにお前の弁当は手作りか?」

 会話がうまく噛み合ってないが私は小さく頷いた。冷凍食品とご飯の残りの詰め合わせではあるが、手作りといえば手作りである。しかしなぜ彼が手作りかそうでないか尋ねる理由がまだわからない。

「姉の少女マンガなどを読んでな、少し憧れていたものだった。マネージャーが彼女で弁当を作って…」
「マネージャーいないもんね、テニス部」
「ただのサポートなのに選手と同じくらいの出費だろうからな、本当にやる気のあるやつしかしないだろう」

 別にお金だけの問題ではなく、テニス部の容姿の素晴らしさやファンクラブの過激さにもあると思う。私なら第一に出費を考えるが。今回の全国大会は東京であったからよかったものの、大阪であれば確実に泊まり込みだろうしコートのレンタル代は馬鹿みたいに高い。

「そこから考えても、弁当なんてほど遠いのだな」
「別にお姉さんとかに作ってもらってもいいと思うんだけど、」

 と、彼の瞳が、いつも見えていない彼の瞳が見えた。つまり彼は勢いよく開眼したのだ。柳くんの瞳が開いたら石になるという噂が流れるくらいに驚く彼の瞳は、綺麗な色である。

「お前はわかっていないな」
「な、何がでしょうか」
「男というもの、一度は彼女というものに憧れるのだ」

 いよいよ柳くんのキャラがわからなくなる。いつも本音を隠してクールにしている柳くんだけど、実際はどうなんだろうか。テニスをしている姿を見かけることがあるが、汗なんかかくことをしらないほど爽やかなのだ。そんな彼が必死になる理由は何なのだろう。

「……柳くん、」
「なんだ?」
「つまり柳くんはマネージャーが欲しいの?彼女が欲しいの?」
「どちらでもないんだが…やはり伝わらないか」

 伝わるわけない、柳くんの気持ちなんて知らないし、柳くんと話したのは今日が初めてかもしれない。それなのに気持ちを察するなんて無茶に決まっている。

「つまりだな」
「うん、」
「お前の弁当が羨ましくて、とでも言っておこうか」

 私の弁当が、ですかと答えれば、そうなるかもしれないなと笑った。それでもまだ本音を言わないだなんて、なんて頑固なんだ柳くん。

「私よりおいしい弁当を作ってくれる人はいくらでもいるじゃないの」
「いや、お前がいいんだ。最初の言葉を思い出してくれれば、わかるだろう」

 最初、そうだ柳くんは彼女にお弁当を作ってほしいと、あの爽やかな顔で言ったのだ。そして私のお弁当、いや私が作ったお弁当がいいと言った。ああ、わかったかもしれない。わかったけどなぜなのかわからない。時々目が合うことはあったが、特に関わりもなく過ごしてきたのに。だからあるはずがないのだ、彼がそのような気持ちを抱くことは。

「回りくどかったようだが…俺はお前が好き、ということだ。わかったようだな」

 やはり、そうだった。柳くんの目は開いており、優しい目を私へ向けている。きっかけが何なのかはわからない。しかし私はとりあえず何か言わないといけないのだ。

「わかったけど…保留でいいかな?」

 まだ私は柳くんについて知らない。知ってる柳くんは、少し面白い柳くんだけだ。だからこれから彼を知っていくつもりなのだ。なら保留にして、私の気持ちに素直に向き合ってみてもいいだろう。何か柳くんにはしっかりと返事をしなくてはいけない気がするから。そう柳くんに伝える。

「望みは十分ということか」
「そうかもしれないね」
「なら頑張るとしようか」

 ぽんぽんと、平均より少し小さな身長の私の頭をなでる。大きな掌から伝わる熱は、ポカポカとしてお天道様の下でひなたぼっこしているような、そんな暖かい気分になった。きっと私がこのお天道様の隣にいたいと思うようになるまですぐのなだろう。






煌めく太陽の君
(きっとすぐに温かくなるね)

蒼薔薇会企画提出作品

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