Novel 5

□雪の女王
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雪のように白い肌。
黒檀のように黒い髪。
ツンと尖った小さな鼻と、果実のように美味しそうな唇。
何より、その冷たい瞳が堪らない。

「なんだ、おまえ、変態か」

あっさり言ってのけた麗人に、なんとかめげずに話し掛ける。

「変態って酷いよね。流石は雪の女王様」
「雪の女王?…誰が」
「言わずもがな、あなたが」

血も凍るような目の前の美人を示す。
本当に悪魔の鏡のカケラが刺さってしまったかのような鋭い眼差しは、きっとMなひとたちにとっては堪らないものがあるだろうな、うん。

「オレは見も知らぬ少年を誘拐するような変質者ではない」
「分かってるよ。それにどちらかと言えばきみのほうがカイっぽいもん」

ギロリ。
「どういう意味だ」
「どうもこうも、言葉通りだよ?眼と心臓に鏡の破片が刺さってしまった少年カイ。みんなのあだ名通り、美しいおねーさまな雪の女王も捨て難いんだけど、きみにはやっぱりカイでいて欲しいんだよね。
きみがカイで、僕がゲルダ。
雪の女王に魅入られたきみの呪縛を愛の力で解き放つ、僕こそゲルダ」

「…何を言っている」

冷ややかな瞳で見下すカイ。
そんな彼を取り戻すため、熱い涙でカイの固まった氷の心を溶かすゲルダ。
僕はゲルダ。
僕だけがきみのゲルダ。

「意味が解らないがおまえはいつもそうやって他のヤツを口説くんだろう?知っているんだ。言っておくがオレはそんなに甘くない」

知っているよ。
きみは違うんだ。
だってきみはカイだから。
僕の大切なヒトなんだから。
微笑むと、一層冷たい目線で睨まれる。
きっとブリザードが吹き荒れている。

「まだまだそう簡単には溶かされてくれないか…流石は悪魔の鏡。なかなかどうして厄介だね」

けれどそんな程度じゃ諦められるか。
僕のカイ。
僕だけのカイ。
きっときみをこの腕いっぱいに抱きしめてあげるから。










End
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