Novel 3
□PinkPinkPink!!
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私のクラスには、二人の“モモイアキ”が在籍している。
桃井亜樹 15歳
百井秋 15歳
困った。
まさか同音異義の名前を持つ同級生が存在するとは。
これじゃあ、
「モモイ」
でも
「アキ」
でも区別出来ないじゃないか!?
しかし唯一幸運なことは、ひとりの「モモイアキ」は男だってことだ!!
これで同性だったら、救いようがないよ…!?
「モモイさん」
突然に前方から呼ばれた名前に、わたしは机に突っ伏した頭をゆっくりと持ちあげた。
「モモイくん…?」
そして目線の先には、真っ黒で少し眺めで癖のある髪をした男の子。
その前髪ですっかりと目を隠しているのに加えて、黒淵のフレームで完成に目を消している。
痩せ型で、いかにもひ弱そうな文学少年といった雰囲気を全身から醸し出すこの「モモイ」くんは、わたしたちの期待を裏切らず、休み時間は友達と会話するでもなく、さっきの私のように寝ているのでもなく、常に手に持つ本のページをめくり続けている。
それはときに難しそうな何かよくわからない専門書だったり、そうかと思えばいかにも頭の悪そうなコミックだったり。
『明日モモイくんが手にしている本はなんだろなクイズ』が一時期裏で大流行したけれど、湿度が馬鹿高いこの日本が蒸し暑くなり、私たちの制服が薄く、軽く―――つまりは夏物になった6月下旬ごろにはそのブームも下火になっていた。
期待を裏切らない文学少年は、皮肉にも私たちの期待をことごとく裏切り続けて、しまいには予想することをあきらめさせてしまった。
ま、私たちが単純に飽きたっていうのもあるけどね。