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□初めましての転校生A
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「初めまして、獄寺君。俺、沢田綱吉。」
「・・・」
かすかに獄寺が頭をさげた。
「みんなツナって呼ぶのなー」
俺が笑いながら言うと、周りから声が飛んでくる。
「ツナじゃねーよ山本ー」
「ダメツナって呼んでるぜー」
「獄寺もダメツナってよべば?」
「ちょ、皆ぁー」
「ツナはツナなのなー」
ツナと俺がそれぞれの意見をいうと、なぜか獄寺もずいっと前に進んで皆をにらんだ。
つい、なにを言うのかと構えると。
「・・・てめぇ、人の名前を気安く呼ぶんじゃねー」
「「・・・(そこか)」」
―――――――――――
何事もなく、時間はすすんでいく。
一日目の最初っからスクアーロに叩かれていた獄寺も、午後の授業になると、寝過ぎたのかぼんやりとだが起きてる。
「あり?次って何の授業だったっけ・・・」
「次は・・・あ、六道先生の授業だよ、山本」
「・・・あー・・・」
俺がちょっと苦笑いをすると、獄寺が食いついてきた。
「六道?とにかく何の授業すんだよ、ってかテメー苦手なのかよ」
「あー・・・まぁ、うければ分かるのな」
「?」
獄寺がすこし首をかしげた。
六道センセは、まぁ・・・ちょっと問題あるかもしんねーけど、それよりも授業がたえらんないんだよな・・・
内心ため息をつくと、ツナが獄寺に話しかけていた。
「獄寺君も・・・初日からアレってつらいとは思うけど・・・一時間だけの我慢だし、もし無理って思ったらぬけていいからね?」
「けっ・・・俺はにげねー」
「「・・・(まさか意地っ張り・・・?)」」
フン、と鼻を鳴らす獄寺だったけど、結局始まった瞬間に顔色が真っ青になった。
―――――――――――――――
「・・・何の授業なんだよコレ!?」
「だから、【色気で敵の意識をそらしてグッサリと行きましょう】の授業なのな」
「違うって山本・・・【色気で敵の注意をそらしてグサっと行きましょう】の授業だって」
「どっちもかわんねーよ!ってか、そんなのマフィアにいらねーだろ!」
前半は山本にむけ、後半は近づいてきていた先公に言ってやる。
と、六道・・・何とかはクフフ、と不気味な笑い声をたてた。
「初めまして、転校生の方でしょうか」
「・・・獄寺隼人だ」
「隼人くんですか。クフフ・・・私は六道骸といいます、お見知りおきを・・・クフフ・・・それにしてもかわいらしいですねぇ」
「・・・キモイ」
「クフン・・・そんな言い方しないでください、そうそう、ちゃんとこれは将来のマフィアに役立ちますから、しっかりとやってくださいね」
そのままクフフクフフいいながら、頭のフサを揺らして立ち去る骸。
「・・・あいつのニックネームは南国果実だろ」
「?惜しいのなー【ナッポー】なのな」
「くそっ」
「いやいやいや!悔しがるとこずれてるからね!じゃなくて・・・さっさとやってすましちゃお?」
「・・・それもそーなのな」
「・・・ってか何やんだよ」
諦めたかのような山本に不本意ながら尋ねると、衝撃な言葉が返ってきた。
「 」
「・・・あ?」
「・・・獄寺、現実逃避はナシなのな・・・」
「・・・いや、でも、お前、まさか『相手がドキドキというか心拍数急上昇というかソソるってことをしたら授業終了』なんて言ってねーよな・・・?」
「やっぱ聞こえてたのなー」
ははっと笑う黒髪に、殺意に近い感情を覚える。
「ほら、だから獄・・・」
「ってか誰にすんだ?まさか一人芝居?ってかまさかナッポーとかいわねーよな」
「まさか・・・」
山本の苦笑にかぶって、「ナッポーじゃないですよ隼人くんんんんっ!」なんて声が聞こえた気がしたが、幻聴だろう。
「てきとーにペア組んでやんだけど・・・ちょうど三人組が一組できるはずだから・・・じゃ、ツナ、獄寺、くもーぜ」
「はあ!?」
「お願い、獄寺君!さっさとやればいいから、ね?」
「・・・」
沢田・・・沢田さんの必死に頼む姿につい頷くと、じゃあ早速、とジャンケンする俺たち。
「ジャーンケーン・・・」
ぽん。
結果は俺がグー、山本がチョキ、沢田さんがチョキ。
そのあと沢田さんが先にやる、と言って、沢田さん先攻にきまった。
「・・・じゃあ、さ。まぁ受け流しといてね、獄寺君」
「・・・おう」
「・・・お、おほん」
沢田さんが深呼吸して、そっと俺を見つめた。
「・・・あの・・・はぐれちゃったんですけど・・・保健室はどこですか・・・?」
内容は笑えるのに、沢田さんのその今にも泣き出しそうな目と、上目遣い。
「・・・あの・・・」
保護欲が。刺激されました、沢田さん。
「沢田さんっ!保健室なら多分俺知ってるんで!行きましょう!いえ、一生あなたについていきます!負けました!!」
「え?いや、ちょ、待って待って獄寺君!!」
「へ?」
「ほら、演技だから、ね?」
「あ」
・・・みっともねーことしちまった。
内心かなりあせってると、つぎは山本の番だった。
「・・・獄寺」
「え」
ちら、と俺と沢田さんを見て、たまたま身近にいた俺を選んだらしい。
「あれ?・・・いいにおいすんな」
「え?別に・・・」
「何かコロンでもつけてる?」
その言葉と同時に、すっと伸びる手。
山本の大きな手が、そっと俺の髪をすくった。
とくん、と心臓が鳴った。
「・・・っべ、別に」
「ふぅん?じゃあ、獄寺のにおい、かな?いいにおいじゃん」
ふわりと笑って山本はそのまま俺の髪にそっとキスを落とした。
・・・キスぅ!?
「てってめ、何を・・・っ」
「何って・・・キス?」
「わかってる!じゃなくて、何で・・・」
「あ、もしかして、髪じゃないほうが良かった?」
「はあ?」
「たとえば・・・こことか」
ふに、と山本の指が俺の唇を捕らえた。
そのまますっとラインを引かれる。
急すぎて、ついていけなくて、ただただ山本を見てると、真剣な目で見返されて。
「・・・なに、して・・・」
「・・・獄寺」
「あ・・・」
そっと山本が近づく。
「何、してるんですか、山本武」
「「あ」」
真横から声が聞こえて、そちらを見やると、六道がいた。
隣には苦笑いしながらも真っ赤になってる沢田さんも。
「・・・ちょっと、二人とも・・・恥ずかしいんだけど、こっちが・・・」
「!!」
とたん、呪縛がとけたかのようにばっと飛びのくと、へらりと笑う山本が目に入った。
「てめーっ!!」
「ははっおこんなって!」
「怒ります!隼人くんになんてことすんですか!!!」
「「え」」
また隣からずいっと六道がでてきて、山本にぎゃーぎゃーという。
「・・・おい、ぱいなっぷる」
「いや、その名前は違うんですが・・・なんですか、隼人くん?」
「うぜぇ」
「・・・・・・・・・・・・」
あーぁ、と沢田さんがため息をついて、俺に苦笑いした。
「獄寺君・・・六道先生、固まっちゃってる」
「?なんでっすかね」
「・・・(気付いてない・・・)」
はは、とまた沢田さんは笑った。
「あ、獄寺」
「あ?」
み、見れない。
なんかはずかしい。
「ゴミついてる」
「え」
俺の頭に手をのばした山本と、不本意ながらばっちり目があっちまって。
「・・・」
とくん、と心臓がはねた。
END
&
to be continue・・・