片恋

□片恋A
1ページ/1ページ



朝目が覚めたら、足の傷がズキリと疼いた。


「・・・ってぇ」


ハァと大きくため息をついてから、そっと立ち上がると、ぱさりと小さな音を立てて薄い毛布が床に広がった。

「・・・ったく・・・」

日に日に酷くなる「咬み殺された」痕。

その咬み殺すことを好んでいる男
並盛の最凶の風紀委員長、雲雀恭弥。

目をとじれば、瞼のうらにはあの黒髪がうかぶ。

いつからだったろうか。

「・・・絶対、倒す」

十代目のため、という理由ではなく
なぜか自分のために、雲雀を倒したくなったのは。







――――――――――――――――――――











「おはようございます、十代目!」

「あ、うん、おはよ、獄寺くん」

今日は十代目がなにやらリボーンさんとの特訓、とのことで、学校にははやめにいらっしゃっていたらしい。
十代目のお母様にそのことを伺い、必死に走って学校に来れば、もう十代目はいらして。
それに。

「よっ!今日も元気だな、獄寺!」

「・・・なんでテメーはここに普通にいるんだよ・・・!!」

朝練らしい山本も一緒にいるってぇのが気にいらねぇ。

くっ・・・俺がもう少し早起きだったら・・・
もう少しはやく走れてたら・・・
十代目に追いついて、こんな野球馬鹿の相手をさせなかったのに・・・!!

と後悔しながらも、やはり一番の後悔の原因に目を落とす。

・・・右足の、傷。

今はズボンに隠れてみえねーけど、結構やばかった。
走ってる途中で、じわりと血がしみた感触がしたのも、少しやばい。


「・・・獄寺くん?」

「Σ!?はっはい!何でしょう十代目」

ぼんやりとそのことを考えていると、十代目が心配そうに見てらっしゃった。

・・・俺ってヤツは・・・

「・・・申し訳ありません、十代目。」

「え?」

「あなたにそんな心配かけられる奴じゃねーっていうのに・・・」

「え?と?獄寺く・・・」

「ですから!この原因の雲雀を今日こそ徹底的に叩きのめしてきます!」

「Σええええっ!?(な、何でそうなるの!?今絶対頭のなかで色々ハナシふっとんだよね!?)」

十代目の驚いたような声をききながら

俺はいつものように屋上へむかう。


トントンと階段をかけあがる。
片手にはライター。
口にくわえるはタバコ。


このポーズで

屋上からふぅと一回煙をはきさえすれば













「・・・ワオ。今日も規則違反だね」












「・・・きやがった」

必ずくる、雲雀。

そして、アイツは満面の笑みを浮かべて、

「・・・咬み殺す」







それを聞いて
また俺は、十代目を口実にここにきた、と思い知らされる。

毎日くりかえす、このやりとり。

そして
毎日くりかえされる、この俺の動悸のテンポ。


その一瞬の笑みとその声に

なぜ俺の心臓はトクリと音をたてるんだろう。









NEXT
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ