片恋
□片恋@
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あー青いな、空。
あー青い・・・って何で空が見えてんの、俺。
【片恋】
気が付くと、もう昼だったらしい。
頭上から十代目の心配そうなお顔が見える。
そう、十代目の心配そうな・・・
「・・・って、十代目ぇええええ!?」
「だ、大丈夫?獄寺くん・・・」
がばっと体を起こすと、途端にさっと体をひかれる十代目。
・・・少し、少しだけですが・・・傷つきます(泣)
「はいっ俺はなんともないんですが・・・申し訳ありません!こんな昼まで十代目をお傍で守れずっ・・・あれ?」
「え?」
大丈夫、とばかりに『守れず』のところで立ち上がった・・・はずが
「獄寺君・・・?」
「・・・ぃて・・・っ」
全身がいてぇ。
ついうめき声と共に、地に倒れこむ。
と、今度は驚いたような十代目の声が耳に響いた。
「だっ大丈夫!?無理しないほうがいいって!」
「大・丈夫・・・です・・・」
ぐ、と奥歯を噛んでにかっと笑いかけると、十代目は何だか悲しそうに「駄目」とおっしゃった。
「え?」
「獄寺くん、すごい怪我してるんだよ?」
「そうなのなー・・・また雲雀にやられたのな?」
「あ」
ぱっと自分をみやれば、そこには「咬み殺された」あとが沢山あり。
「・・・また・・・負けたッ・・・!!」
「え?」
「・・も・・・・・・・ん・・・」
「え?何?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「?ごくで」
「・・・申し訳ありません十代目ぇええええ!右腕の、右腕の俺があんな・・・あんなただの暴力男に負けるなんて!申し訳ありませんんんっっ」
「ぼ、暴力男って・・・」
「まぁまぁ、獄寺、とにかく昼飯・・・の前に、シャマルのおっさんに手当てしてもらえって」
「こんの野球馬鹿!アイツは女しかみねーだろが!」
「あー・・・でも獄寺は結局見てくれるじゃん?」
「・・・ちっ」
くそ、いつかはぜってぇ倒す。
そう物騒げに呟く俺を、冷や汗を流しながら見る十代目、とにかっと笑う山本。
てめーも何で笑ってんだ!!
果たす!!
スッとボムをとりだして構えると、まるでタイミングをあわせたかのように、十代目がぽつりと呟いた。
「・・・最近雲雀さん、何かイライラしてるよね」
「・・・え?」
「なんか・・・んー・・・なんていうかな・・・なんか、たとえばほら、獄寺くん咬み殺されるの多くなったし、なんか段々怪我ひどくなってるから・・・」
「・・・」
「?獄寺?」
ぐ、とまた奥歯をかみ締めて、必死の思いで立ち上がれば、隣から十代目と山本の腕がのびてくる。
「獄寺、」
「うるせぇ、保健室いくだけだ」
山本は振りほどき、十代目の手をやんわりとはずす。
と、十代目のその暖かい目がじっと俺を見て。
「気をつけて・・・ね?」
「はい!ありがとうございます十代目!」
「・・・あ」
ぱたん。
屋上からの扉をしめ、階段をおりていく足音。
それを聞きながら、彼のしめた扉を見つめ、ぽつりと、彼の敬愛する次期ボスは呟いた。
やっぱり、と。
「・・・え?」
「最近なんか獄寺くん・・・おかしいよね」
「・・・ツナは何か知ってるのな?」
「いや、俺は知らないけど・・・なんか・・・」
なんか、何かがある。
そういう顔をしているのに、
「・・・聞かないほうが・・・いいのかな」
彼の瞳も、手も、去って行く背中でさえ、
「・・・ツナ・・・」
世界を、拒絶してる。
かかわってほしくないって言うかのように。
「獄寺くんには、笑ってて欲しいって言ったのにな」
知ってる?
最近、君には笑顔がないんだ、獄寺くん・・・
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