銀糸

□月夜U
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トゥルルル・・・


「あ、ケータイ」

「・・・誰からだあ?」

「・・・・・・山本」

「出てやれぇ」


さっきつけて、きり忘れていたケータイ。
そこに光るほのかな赤い光が、着信を示す。


「・・・わり、ちょっと出る」

「ちゃんと話すんだぞぉ隼人」

「わーってるよ」


店内ではまずい、とおもって、店の外へ。


カラン・・・と背後で扉のベルが鳴るのを聞きながら、通話ボタンを押した。






『・・・獄寺!?』

「んだよ」

『・・・怒ってる・・・よな?』

「・・・さーな」

スクアーロに話して少しは収まったが・・・浮気されてんだ、とおもうとまた怒りがこみ上げてくる。

『獄寺、その、浮気とかしてねーから』

「・・・言い訳はきかねー」

『だから誤解だって・・・!!』

珍しくあせっているのがもろばれな山本に、つい口元がゆるむが、出る声は固い。
だって、わざとそうしているから。

『ごくでら・・・』

「じゃあ言ってみろよ、あれは誰の香水だ?あ?」

『香水??』

「バラっぽいにおいしたじゃねーか」

『・・・あ』

気付くのがおせーっつーの。

「・・・じゃーな」

『あ、ちょ、獄寺!!今どこ!?』

「・・・さーな。テメーには関係ねぇ」

『ちょ、ごくでら・・・!』

スゥ、と首を涼しい風が撫でていく。
夕方になると、まだ寒い。

「じゃあな。探すんじゃねーぞ」

『待って、獄寺!今どこ?誰といんの?』

「・・・探すなよ。ちゃんと帰んだな。」

『だからごく』

「俺の一番の理解者」

『・・・え?』

「俺の一番の理解者と一緒に・・・いるから」

『!』


ブチッ


通話をきると、まるで山本の顔が見えるような気がして、ふと息をつめた。

「・・・優しいんだなあ?」

「Σなっ・・・っす、スクアーロ」

・・・びびった。

後ろを振り向くと、店の扉の横によりかかるようにして、人の悪い笑みでこちらを眺めているスクアーロがいた。
何笑ってんだよ。

「何が優しいんだよ」

「アイツに探すなって言っただろお」

「・・・?それが?」

「もうこの時間帯になると少し冷えるからなあ」

く、と喉の奥で笑われた瞬間、顔が熱くなるのが分かった。

「・・・ッ///」

ばれてた。

この時間帯になると、確かに少し冷える。

で、俺は今日は帰らないし、普通にケイタイの電源も切るつもりでいるし、つまりは山本に俺は探せない。

もし山本が一晩中俺を探したら?

もし、もしも寒くて風邪でもひいたら。

「・・・心底ほれてやがるな゛あ」

「う、うるせえっ!ちげえよっ」






『う゛ぉおおおおおおおおおおいっっ』









「!?」

その瞬間、スクアーロの大声が空気をきりさいた(大げさ

「・・・あ゛?ケータイかあ・・・?」

「・・・な、何ぃぃっ!?」

ケータイの着信音に自分の大声を採用するとは。

さすがヴァリアー。そしてさすがのヴァリアークオリティー。






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