『やだやだ!卒業したくない!」 「今更なに言ってんでさァ、しっかり卒業式出たくせに」 『あれは……っ、建て前!』 建て前の卒業式ってどんなんだよ、って自分でも思ったけど、今はそれ所じゃない。溢れ出す直前の涙を何とかせき止めているので精一杯だ。 『あたし卒業しない!』 「……いい加減諦めなせェ」 『やだっ!…だって…銀高大好きだし…っ…』 「…まだ泣くんですかィ?」 『…っ…3Z大好きだし…』 総悟はもう何も言わない。でも、それは相手にしてないとか呆れてるとかじゃなくて、ちゃんと話を聞いてくれてる証拠。 『……銀八が担任だったから…授業だって真面目に出た……っ…』 涙でグシャグシャになった顔、総悟以外にはとてもじゃないけど見せられないや。 『…っ…それに…総悟が居たから……』 堪えきれなくなって声を上げて泣いてると、教壇の側にいたあたしに近づいてくる総悟。いつだって隣に感じてた総悟の香りが、体温が、今だって(もう卒業してしまった今だって)隣にある。 「…ったく、仕方ねェな。手。」 『…っ……なに?』 「良いから手、出しなせェ。」 有無を言わさぬ総悟に手のひらを見せれば、小さな冷たい感触。 『……総悟、これ…』 「これやるから、泣きやみなせェ」 Color flooded her face when he smiled at her. (…ねぇ、これ何番目?) (随分野暮なこと聞くんだねィ) (……!) --------------- 英訳:彼が微笑みかけると彼女の顔は真っ赤になった |