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□土方
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『……今日は、来ないの?』

「…あぁ、行かねぇかもな」

『少しは1人で待ってる身にも…』

「じゃあ別に待ってる必要ねえよ」

『……トシ、なに、酔ってるの?』

「酔ってねぇ」

『その飲み会、女の子も居るんだ…』

「だったらなんだ」

『……もういい』

「は?」

『……もう、待たない。電話も、もうしてこなくていいから。じゃあね』


返事は待たずに通話終了のボタンを押した。自分で切っといて、無機質の機械音に涙が出そうになって慌てて飲み込んだ。あたしの今までの気持ちは何だったの。うすうす感じてた。あたしじゃトシの1番にはなれなくて、それでもあたしはトシが好きで。散々我慢したよ。我慢なんて思いたくなかったから一生懸命目をそらしてたけど、あたしは我慢したじゃない。好きだったから、平気だったじゃない。好きだったのに。考えれば考えるほど鼻の奥がツンとして、必死に飲み込んでたものが溢れて、携帯のディスプレイを濡らした。

トシに、何にも代えられない大切な人が居るのは知ってた。それでも、あたしを選んだのはトシだから、そう思うと隣で笑ってられたのに。もう、死んじゃった人になんか敵うわけないよ…そんな風に考えてる自分がすごく汚く見えて、またひとつ雫がディスプレイを濡らした。もう、待つのはやめよう。好きでいるのは、やめよう。かけ直しても来ないんだもん、もう、終わったんだよ。必死に自分に言い聞かせて、言い聞かせるたびに涙は溢れてくるけど、今のうちに、泣いとけばいいや。もう、いいの、これで。無理やり、自分を納得させた瞬間、携帯が今まで聞きたくて仕方なかった音でけたたましく泣いた。


『………はい?』


あたしの意思なんてこんなものか。未練タラタラなんて、絶対、嫌だった。最後くらい、あたしだって、かっこよく居させてよ。そんなところも気が利かないいんだから。胸の中で散々悪態を吐きながら手にはしっかり携帯を握ってて、自分の意思の弱さに自然とため息が漏れた。


「…近藤さんに、ちゃんと話してこいって追い出された」

『……へえ』


近藤さんに、か。もう自分の意思ですらないなら、いっそこのままほっといて欲しかったけど。


「……」

『今、傍に』

「誰も居ねぇよ」

『だったらどうぞ、好きなように告白したら』


泣いてたのだけはばれないように必死に虚勢を張って、気丈に振舞って、それで何かが変わるわけじゃないのに、意地になって強がって。


「お前を比べるわけじゃねぇ」

『…………』

「…、でも、消えねぇんだよ」

『……知ってるよそんなの。トシは1回もあたしを見たことなんかないよ』

「それは違う」

『…何が違うのよ!』

「お前が張り合ってたんだろ」

『……あたしのせいなの』

「それでも、あいつを思い出させるには十分だったんだよ」


静かな、低いトシの声。もう、聞くこともなくなるんだろうな、なんて、やけに冷静な頭で考えた。瞬きをしても、






『トシは、きっと一生1人だよ』

「……何でだよ」

『あたしほど我慢強くていい女はそうそう居ないってこと』

「…話が見えねぇ」

『さっき言ったじゃない』


携帯を握り締める手に力が入る。あたしは好きだよ。でも、あたしが終わらせるんだ。あたしの手で、終止符を打つ。


『もう、あたしに縛られなくていいから』

「………」

『そのかわり、あたしももう待たない。』

「…………」











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ど う し て こ う な っ た
………ごめんトシ。


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