ぼんやりとした思考の中でそうっと目を開けると銀色に視界を支配された。嫌になって再び目を閉じた。 「起きたの」 『……うん』 「なに、せんせの腕枕で目覚めるのは不本意?」 『非常に。』 贅沢な子なんだから、と先生が隣でくつくつ笑う。非常に不本意ながら、居心地がよくなってしまった先生の隣で小さく体を捩る。何か着るものがほしい、寒い。 「で?」 『なに?』 「引越しちゃった幼馴染君は忘れられた?」 『…うっさい』 「そう怒んなって」 『忘れるも何も、』 「あぁ、最中はオレのことで頭いっぱいだもんね」 『………ちくしょう、犯罪だぞ』 「同意の上でしょ」 悔しいのに離れられなくて、先生に擦り寄ると、先生はあたしの髪を掬って目を細める。すごく、優しい顔で、笑う。 「今だって名前で呼んでくれればいいのに」 『嫌です』 「必死に俺の名前呼んじゃってさ、」 『もう嫌だ変態』 「照れちゃって、可愛いんだからー」 『……シャワー借りるよ!!』 強引に先生の腕の中から抜け出して少し声を張り上げる。布団にくるまって未だに「逆に先生って呼ばれるとイケナイことしてるみたいで萌える」とか「でも名前呼ぶときの恥ずかしそうな顔が」とか延々言ってる変態を睨むと、ニヤニヤしながら腰に腕を回された。 「待って、どうせなら一緒に風呂入ろーや」 『何でよ!』 嫌だよ、って言葉は、再び先生の腕に閉じ込められた衝撃で飲み込んでしまった。 「じゃあ、お前も行かないで」 『……なに、どうしたいの』 「オレこのまま布団でぐだぐだしてる時間が好きなの」 『………』 「ね、おいでよ」 耳元でそんなの、反則だ。最初から、幼馴染とか、そんなのどうでも良かったのに。あたしは最初から先生が良かったのに。それを知ってか知らずか、先生はあたしを振り回すんだ。もう嫌だ、そんな優しい顔で笑わないで、そんなに優しく抱きしめたりしないで。 心臓、きこえちゃう (忘れるも何も、最初から) --------------- 最初から両想い。実は。 |