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□8月1日
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出かける準備を終えて、ぼーっと鏡に映る自分を眺めた。年を取ったものだ。10年と言うのはこんなにも自分を変えた。自分だけじゃない。彼らもまた、10年と言う月日の中で変わっていった。ただ、今も変わらずにあるのはカレンダーの8月1日を囲む赤い印。今年もこの日がきた。今年から光子郎とミミちゃんもお酒が飲めるんだなあ。あのメンバーでお酒を交えて思い出話が出来るようになるなんて。想像もしてなかった未来に立っている自分が可笑しくなって、小さく笑った。携帯がテーブルの上で震えてメールの着信を知らせる。ディスプレイに表示される“高石タケル”の文字。タケルくん、久しぶりだな。今高校生か、彼らが成人する頃には……あぁ年の差って怖い。住んでるところもあって、太一とは今でもよく会うけど、逆に殆ど会えない人も居る。丈さんとか、去年の今日以来だ…元気かな。いろいろ考えながらメールを開いて、添付された画像に目を細めた。友達の結婚式に出た時らしい、空とヤマトの寄り添う姿。いつかはあたしも2人の結婚式でスピーチすることになるのだろうか。そう遠くないだろう未来に胸がいっぱいになった。返信を終えた携帯を閉じて時計を見ると、そろそろ約束の時間。あたしが1人で暮らすこのワンルームは、外の通路を歩く声がよく響く。予定通りの2人の声が聞こえて1人で笑った。ヒカリちゃん、相変わらず太一と仲良いんだなあ。インターホンが鳴る前にドアを開けたら2人はどんな顔をするだろうか。子供の頃のイタズラを思い出して頬がゆるむ。あたしは今年も今日という日に思いを馳せるのだ。



勇気を受け継ぐ
子ども達へ
8月1日がはじまる









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10周年おめでとう!
(090801)


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