Black World

□至上の愛2
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「皆さん、こんな時に何ですが食事にしませんか?何も食べてないでしょう。
ここに運びますから、兄さんここから動きたくないでしょう?」

アルは涙を拭うと、笑顔を見せた。その笑顔につられて笑みがこぼれるが、エドだけは柩の中を見つめたまま動かなかった。

食欲をそそる何とも言えない、いい香りが漂う鍋と、食器を中尉とアルの二人が運んでくると柩の前で晩餐が始まった。

「兄さん食べて…」

「要らない…。」

伏せ目のままそっけない返事を返した。

「昔から兄さんはそう、多分そう言うと思ってたけど、食べて!」

アルは口を屁の字に曲げて抗議をする。

「大将、旨いぜ」
「エドワード君、美味しいわよ食べないの?」

「わかりました。食えばいいんだろう!」

素直にスープ皿を受け取り久しぶりに口にした食事は、少しだけど心を癒してくれた。

「旨いなアル、大佐にも食わせてやりたいな…。」

『そうだな…鋼のが作ったポトフも旨かったがな。』

耳元に不思議な声が再度響き渡りこの声を最後に、不思議な空耳は消えた。

    ********

「兄さんは、此処で寝たいでしょう?」

相変わらず気の利く弟である。

ベッドのマットだけを引っ張って来てその上にはシーツやら、ブランケットやら着替えが置いてあった。

「とりあえず、寝床作っておくし、此処にちゃんといるからシャワーあびておいでよ。サッパリするよ。


「エドワード君、お先にシャワー借りましたよ。私も此処にいるから。」

「わかったよ…、頼んます。」

着替えとタオルを握りバスルームに向かっても、思い出すのは、その時の事ばかり。

鏡を見ると、乱れた髪と、目の下にクマを作って酷い顔をした自分がいた。

こんな顔じゃ大佐に怒られちまうな…。


 不覚にも、おちてしまった出来事。

大佐が突然いい出した、思い出すだけで、首筋がくすぐったくなるような台詞、
「以外にも綺麗な髪をしているな。」

下ろしていた髪を一房を掬われ、髪にキスを落とされる。

「アンタ、こっぱずかしい事何、言い出すんだよ!」
顔から火が出そうな勢いだった。
「美しいものを美しいと讃えて何が悪い?なぁ鋼の?」
油断してる隙に髪をかき上げられ耳たぶを嘗められ首筋に朱い花を丁寧に咲かしは、髪をもて遊び、甘い唇を何度も合わせた。

その髪にはもう触れては、くれない。
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