Black World
□至上の愛
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「ネクタイ何か締めた事ない、何時も締めてもらってたし…。」
始めてスーツを着たのも、大佐が誂えてくれたから。
「食事に行こう。」
何で、オレは飯を食いに行くのにスーツなんか着なきゃなんないのか、凄くナゾで言われるがまま、何時のまにかオーダーしたんだか、真っさらのスーツが用意されていて、サイズもピッタリでオレは嬉しいんだけど、なんか恥ずかしくて。
ネクタイを絞めてもらう時が一番緊張した。
直立不動のまま。実に慣れた手つきで、オレはなすがままにされた。
大佐も何時もと違ってて、髪を綺麗にオールバックにそれが又カッコよくて。
相手が男なのにドキドキした。
オレの髪も梳かれて綺麗にみつあみをされた時にはびっくりした。
「男前の出来上がり
さぁ行こうか鋼の…。」」
ゴージャスな夜で、解らないメニューを渡され困惑していると、丁寧に教えてくれて、好みの物を注文してくれた。
軽くお酒も入って、それでいて、甘い夜で、
オレも気持ち良くなって、素直に甘えてみた。
全部受け止めてくれた。
その時初めて唇が合わさって心臓飛び出るかと思った。
ドキドキして。
あの瞳に見つめられるともう抵抗なんかできない。
びっくりする位優しかった。
初め少し怖かったけど、緊張を解く為に合わされた唇が甘すぎて、オレは腰が砕けて。ヘタリこんだっけ。
「ちょっと冗談が過ぎたかな、鋼の…。」
悪戯な口元を浮かべて
オレはからかわれている事に気がつき、思わず反抗しようとしたんだけど。
呆気なく張り付けられて、アイツのしっかりとした腕に抱かれた。
それからフワフワと夢ウツツ。
あまりよく覚えてないけど、人の体温がこんなにも温かいものなんだと、確信した日でもあるし、普段は絶対に見れない大佐の優しさを目の当たりにした、いっぱいいっぱい気を使ってくれてた。
そんな一夜だった。
けど、ズリィよしっかりオレを着飾って、旨いもん食わして、頂きますって。
暫く腰を撫でられ、オレは半ベソかいて顔を真っ赤にしてうずくまってると、謝らない大佐が、ゴメンゴメンと髪を撫でてくれたのも。今じゃ…。
オレの身体に植え付けられた、褪せない記憶。
だけど、
今はもう縋れない。
その優しい腕に抱かれたり、身体も合わせる事ができない。
その腕や指先はもう硬くなって、二度と動いてくれない。
身体が酷く疼いた。
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