Black World

□至上の愛
2ページ/2ページ

「ネクタイ何か締めた事ない、何時も締めてもらってたし…。」

 始めてスーツを着たのも、大佐が誂えてくれたから。
「食事に行こう。」

何で、オレは飯を食いに行くのにスーツなんか着なきゃなんないのか、凄くナゾで言われるがまま、何時のまにかオーダーしたんだか、真っさらのスーツが用意されていて、サイズもピッタリでオレは嬉しいんだけど、なんか恥ずかしくて。
ネクタイを絞めてもらう時が一番緊張した。
直立不動のまま。実に慣れた手つきで、オレはなすがままにされた。

大佐も何時もと違ってて、髪を綺麗にオールバックにそれが又カッコよくて。
相手が男なのにドキドキした。
オレの髪も梳かれて綺麗にみつあみをされた時にはびっくりした。

「男前の出来上がり
さぁ行こうか鋼の…。」」
 ゴージャスな夜で、解らないメニューを渡され困惑していると、丁寧に教えてくれて、好みの物を注文してくれた。

軽くお酒も入って、それでいて、甘い夜で、
オレも気持ち良くなって、素直に甘えてみた。
全部受け止めてくれた。
その時初めて唇が合わさって心臓飛び出るかと思った。
ドキドキして。
あの瞳に見つめられるともう抵抗なんかできない。

びっくりする位優しかった。
初め少し怖かったけど、緊張を解く為に合わされた唇が甘すぎて、オレは腰が砕けて。ヘタリこんだっけ。
「ちょっと冗談が過ぎたかな、鋼の…。」
悪戯な口元を浮かべて

オレはからかわれている事に気がつき、思わず反抗しようとしたんだけど。

呆気なく張り付けられて、アイツのしっかりとした腕に抱かれた。

それからフワフワと夢ウツツ。

あまりよく覚えてないけど、人の体温がこんなにも温かいものなんだと、確信した日でもあるし、普段は絶対に見れない大佐の優しさを目の当たりにした、いっぱいいっぱい気を使ってくれてた。

そんな一夜だった。

けど、ズリィよしっかりオレを着飾って、旨いもん食わして、頂きますって。

暫く腰を撫でられ、オレは半ベソかいて顔を真っ赤にしてうずくまってると、謝らない大佐が、ゴメンゴメンと髪を撫でてくれたのも。今じゃ…。


オレの身体に植え付けられた、褪せない記憶。
だけど、
今はもう縋れない。
その優しい腕に抱かれたり、身体も合わせる事ができない。


その腕や指先はもう硬くなって、二度と動いてくれない。

身体が酷く疼いた。


next→
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ