haruharu

□haruharu
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 二度と来る事もないだろ、何故か私は、誰かの事を思い出していた。小さな。あのコ。


あの日の別れから…時間が流れていた。
この花を見たのならば、多分…二年は経っている。

"トントン…"

「大佐…入れてよ…居るんだろう?大佐…」

聞こえるはず等ない、あのコは、サヨナラと言って…私の腕の中から消えてしまったのだから。
それに、大佐って誰だ?


「誰か…いないの?」


意を決して扉を開けると、長い金髪をポニーテールにした少年が立っていた。
でも誰だかわからない。


「よぉ、大佐。突然"異動"すんなよ探した。」

まだ、キョトンとしたまんまの大佐。

「どうぞ中へ…」

てっきり抱きしめられて迎えてくれると思っていたのに…。


「何だよ、俺だよ俺!!エド!エドワード エルリック!!」


絶妙な距離感。
続かない会話。

何とも言えない空気だけが漂う。

時計のカチコチと言う音だけがむやみやたらに、大きく聞こえる。


『あ…あの…』


笑わない大佐。

「君は、ここで、ゆっくりしたらいい、私は別の部屋に移動するから。失礼する…。」


君?大佐、何故…俺の事名前で呼んでくれないの?


「大佐?!」


「君、誰かと間違えていないかい?私は、大佐じゃない。」



私は、併設されている医療施設に足を運び、常駐医に頼んだ。
「スマンが、薬をくれないかい…あまり気分がすぐれない。」


 俺は、大佐の事をおっかけた。
距離を置き、その行方を知り、足が止まる。


 大佐は以前に、大きな怪我と病に伏せ、死線をさ迷った。

俺は、あの後、皆の前から姿を消した。

そして今回。俺は二度と戻るハズのないこの国に再度戻された。


先ずは、大佐を探した。

直ぐに見つかったが、あの時の仲間達は、あまり良い顔を見せない。

初めは、まるで何かを見る様な皆の視線が辛かった。
突然の現実は、俺にも、古い仲間達にも厳しい状況となってしまう。


「あまり良くなってないんだ…。」


事情を聞き現実を知る。



「君は、あの子に似ているね。あの子も長い髪だった。髪を梳いていいか?」

「あぁ」

俺は、髪留めを解き、大佐の前に座った。
あの時と同じ様に。

変わらぬ手つきで俺の髪を梳く。
優しい手つき。
大きな手が俺の頭を撫で、頬を掠める。

「髪留め。」

俺は、握っていた髪留めを大佐に渡す。
慣れた手つきで、綺麗に一つに纏められた髪。


「何で…君。泣いてるの?」
昔と同じ様に大佐の人差し指が涙を掬う。
やめて…これ以上優しくしないで。


俺は、大佐から離れてその場から逃げた。


「君っ!!」
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