LOVE WARS


□DAY.2前編〜リザ〜恋する乙女は、最終兵器彼女。
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「君、続きは私がやる、席を外してもらっていいか?」
「了解です。」

応急手当をする隊員から鋼のを受け継いで自分の腕中に納めた。

小刻みに身体が震えて、目をカッと見開き、何時もの発作と痙攣を繰り返し、細い呼吸を繰り返すエドに、何時も通りに口移しで薬を飲ませる。
息を軽く吹き込んでは、落ち着かせるのだが、今回は治まらずロイは困惑した。
 痙攣で舌を噛み締めないように、ロイはエドの口を軽く広げハンカチを丸めて噛ませた後、自分の着ていたコートを被せ、赤子をあやす様に抱きしめて名前を呼び続けた。
「エド、エドしっかり…」
直にリザが、毛布を持ってかけつけた。
 
更に毛布に包み、一旦リザの腕に預けて、ポケットの中から細い木箱を取りだし、注射器をセットする。
ずっと世話になっている、ノックスドクターから渡されているエドワードの救急薬。
腕の筋肉の部分をしっかり掴み、躊躇なく突き刺し一気に薬剤を注入すると、震えがやがて止まり、寝息をたて始めた。

「よかった、薬が効いて…」
ロイの顔に少し安堵が戻る。

リザは筋肉注射の部分を固まらようにしっかりと解した。

遅れてノックスドクターが到着して、エドワードの脈や、瞳孔を確認し、胸の音を聞く。
「よし、移動だ。そっと、頭を揺らさない様に、気をつけて…」

ロイが抱えて頭の部分をリザが支える。
せっかくのドレスもボンネも、何もかもが爆風に煽られ煤けて、見るも無惨な状態だった。

 勿論、ロイもリザも煤けていて…。
爆発物近くに居たエドワードが一番の被害者だった。
 咄嗟にロイも自分の焔で“壁”ファイヤーウォールを造ったが寸分の差で間に合わず、エドの小さな身体は飛ばされ、叩きつけられた。爆風で散った壁や硝子の破片は、その場に居た全員の頬や腕を掠め、青い制服を血に染めて煤けて黒くなっていた。
エドワードの顔も掠めたために顔半分は三角巾で巻かれ血が滲んでいた。
リザの手の甲や、耳たぶ、頬も引っ掻かれた様に赤い筋が残り、露出した肌に躊躇いもなく傷がついていた。
風に煽られた血が黒く固まり筋になり、ピアスが変形していた。


 行く先はノックス宅。軍用車をゆっくり発車させ終始無言まま移動を開始した。
テロリズム…。
無差別犯罪…。

ロイの背中には嫌な汗が流れ、唇を噛みしめた。

挑戦状は受け取った。

その顔は修羅となり、先を見据えた。
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